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ラブストーリー

LOTUS 〜Next to Narita 3〜 <後>

   

「インカム外してるってことは、パトロール終わりなんだろ?
たまには俺と一緒に帰っちゃう、なんてのはどう?」
「お断りします」
「なんで」

LOTUS』 ―光輝×瑠音―
≪光輝*高等部1年生*2月≫

Illustration:Dite

 

 お姉さん、昨日はメールありがとう。
 お姉さんにまで心配かけちゃってごめんね。

 さっき、看護師さんたちに見送られて退院したところなんだ。
 担当の看護師さんから、記念の花束までもらっちゃった(^v^)

 じゃあ、落ち着いたらまたメールするね!
 まだ寒いから、お姉さんも体に気をつけてね。 *RUNE*

 学校中が浮かれている、バレンタイン・サタデーの午後2時。
 わたしの携帯電話に、無事に退院したるねるねからこんなメールが届いた。あんなにかわいい男の子なんだもの、入院の後半は看護師さんたちのアイドルだったんじゃないかな。今日なんか退院祝いの花束と一緒に、バレンタインのチョコまでもらっていたりして。
(そうそう、チョコと言えば)
 るねるねの「お出迎え」には間に合わなかったみたいだけれど、野々宮くんたちのすすめもあって、今日の成田くんはクラス委員の仕事を休んで早々に下校した。
 その両手には、特大の紙袋。
 自分の分だけでも毎年大漁なのに、今年は欠席中のるねるねの分まで預かったものだから、なんだかものすごいことになっていた。しかも、今年はどうしたわけか男子からチョコを渡す「逆チョコ」なるものが学園内で大流行してしまったから、るねるねなんか男子上級生たちから結構な数を贈られちゃうという始末。野々宮くんの目撃情報によると、どさくさにまぎれて成田くんにチョコを渡した男子も、ひとりふたりではないらしい。
 心優しい成田くんのことだから、手渡されたチョコを「ありがた迷惑」なんて思わないだろうけど、もらう側にも事情や都合というものがある。いくらお姉さまやお母さまがいるとは言え、あれだけの量を、毎年どうやって消費しているんだろうと心配にもなる。
 だから、わたしたちのような年季の入ったファンは、できるだけコンパクトなチョコにありったけの気持ちを込めて贈るようにしているんだけれど……なんだかんだで、今年もやっぱり、あの大荷物なのだった。
(野々宮くんの言うとおりだわ。あそこまで来ると、もうタクシーで帰るレベルよね)
 野々宮くんにからかわれながら、山のようなチョコと共に教室をあとにした成田くんの後ろ姿を思い出す。ホワイトデーには、またいつものように、お返しのキャラメルをくれるんだろう。成田くんの、そういう律義なところも、わたしたちは好きだった。
 実は数日前に、上級生のお姉さまがたから、「事情が事情だから、今年はるね担もなり担も、バレンタインを自粛しましょう」という提案があった。でも、るねるねもめでたく退院が決まったし、成田くんも元気を取り戻したし、何より年に1度の大イベントを諦めるのは、ファンにはなかなかツライものがあって。
 結局、「できるだけ控え目に」ということで落ち着いたんだけれど、控え目にしても特大の紙袋5つ分になっちゃうんだから、さすがは学園アイドル・ランキングの1位&2位だった。
「わ、早い。もう4時なんだ」
 週明けの月曜日にるねるねの元気な顔を見なければ、本当の意味での「一件落着」にはならないけれど――わたしたちなり担&るね担からすれば、今日のバレンタイン・イベントを無事にクリアした時点で、すでに「日常」を取り戻していた。
 成田くんとるねるねが両想いなのは、周知の事実。
 もう学園公認と言えるほどの仲の良さだから、わたしたちファンのなかに、本気で恋人の座を狙っているひとなんてほとんどいない。こうしてバレンタインのチョコを渡してしまえば、ある程度、満足できちゃうのが大半だった。

 

-ラブストーリー

LOTUS 〜Next to Narita 3〜<全2話> 第1話第2話

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