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SF・ファンタジー・ホラー

我が主君!!【9】

   

※作品中にガールズラブ的展開があります※

みちるが、自分が“御曹司”として登場する夢を見た、同じ日。香子と藍子は、大ファンであるアーティスト『昼夜』の新譜を入手した。

午後になって、みちるが坂城家を訪れ、四姉妹とみちるはおしゃべりに興ずる。けさ方の夢のことをみちるが話題にしたあと、みちるの中に過去の記憶がにわかによみがえって…。

「やっと思い出したよ…。いやだと思いながらみんなと離れ離れになった――あのときのこと…」

 

 目を覚ましたとき、みちるは、夢の内容を今までになくはっきりと覚えていることを不思議に思った。
(それに、なんだか、幸せな気分の夢だったな……)
 いくさのない平時は、彼らはあんなふうにして過ごしていたのだろうか。
(夢の中のわたし、三郎二郎と三々郎の兄弟のこと、ほんとに信頼してた……。二人がきてくれたことが心からうれしくて、三人でいるのが楽しくて――)
 ベッドに身を起こす。
 カーテンを開ければ見えるはずの隣家の、秀麗な住人たちのことを思う。
 なんとなく、頬がゆるむ。
(藍子の顔、見たくなっちゃった)
 みちるはベッドから立ち、勉強机に置いてあった携帯電話を手に取った。「きょう、部屋に遊びにいってもいい?」と訊ねるメールを打つつもりで。

 きょうは、日曜日。

□□□

 午後二時少し前。
 出かけていた香子が帰宅した。庭で芝刈り機を使っている父親に「ただいま」と声をかけて玄関を入り、キッチンでなにやら作業している母親と鴇子にも「ただいま!」と声を投げて、そのまま階段を駆け上がった。ドアの開いている藍子と鴇子の部屋を覗くと、藍子はベッドに寝転がって本を読んでいた。
「藍子! 『昼夜(チュウヤ)』のアルバム買ってきたよ!」
 聞いて、藍子は跳ね起きた。
「待ってました!」
「下いって聴こう」
「うん」
 持っていたバッグなどを部屋に放り込むようにして、香子はCDショップのビニル袋だけを手にし、藍子と連れだって階下へ下りていった。
 坂城家の、一階の北西にある一室は防音が施されていて、ここには母親が昔使っていたアップライトピアノと、鴇子のエレクトーンと、父親が購入したオーディオセットが置かれている。
 香子と藍子はその部屋へと足を踏み入れた。父親が「けっこう値が張ったんだぞ」と言うオーディオセットも、最近では専ら、娘たちにより国内外のロックやポップスを再生するのに使われている。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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