幻創文芸文庫 (β)

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SF・ファンタジー・ホラー

我が主君!!【13】

   

※作品中にガールズラブ的展開があります※

みちるの部屋で、みちるは藍子に、過去の約束不履行をなじる。藍子は謝罪し、今生こそ一緒にいようと二人は再び約束を交わす。

二人でおしゃべりするうちに、みちるが突如苦しみだした。藍子はみちるの母親に知らせようとするが、いるはずの母親はいなかった。水槽の熱帯魚さえも消えていた。
異変に立ちすくむ藍子の携帯電話が鳴り、香子の声が言う。
「変よ、藍子! 世界が“止まって”る!」

 

「え?」
 不思議そうに、藍子は小首を傾げた。
 みちるはもう一度「目、つむって」と繰り返した。
「それで、わたしの話を聞いて。藍子に訊きたいことがあるの」
「……うん。分かったわ」
 応えて、藍子はそっと瞼を閉じた。ピンと張った薄い瞼の縁には、ゆるいカーブの長い睫毛が、きれいに並んでいた。
「ねえ、藍子。藍子は、今生ではわたしを一人にしないでおいてくれるんだよね?」
「そうよ」
 と、藍子は目をつむったままで、自信ありげに静かに答えた。
「あたしたち、今度こそずっと一緒よ」
「うそじゃないよね?」
「うそなんて言わないわ」
「っ……」
 自分でも思いがけず、みちるはその返事にムッとした。
「うそつき!」
「なんでよ?」
 身に覚えのないことでの糾弾に、藍子は目を閉じたままで眉根を寄せた。
「目、開けていい?」
「だめ!」
 「まだだめ!」と言いながら、みちるは両膝をラグについて、横から藍子の正面へと身を乗り出すようにした。
「もう一回訊くよ? 今生こそ、藍子はわたしを一人にしないのね?」
「しないわ。決してしない」
「約束してくれる?」
「ええ。約束するわ」
「じゃあ、約束の印ね、これ――」
 みちるは、そっと顔を藍子の顔に近づけて、ドキドキする胸を押さえながら、静かに唇どうしを触れ合わせた。
 ゆっくりと顔を離すと、藍子の瞼がふるえて、美しい瞳が徐々に覗いていくのが見えた。
 少し驚いたような表情で、幼なじみはみちるの顔を見つめた。その頬が、ほんのり桜色に染まっていた。
 今さらに自分も気恥ずかしくなって、みちるは顎を引いた。顔がほてっているのが分かる。さっき、どうしてそんな勇気が自分に出たのか、早くもそれが分からなくなっていた。けれど、上目遣いのまま、視線だけは決して逸らさない。

 

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