幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

我が主君!!【14】

   

※作品中にガールズラブ的展開があります※

香子と合流して、藍子は少しホッとする。そこへ、みちるがふらふらと階段を下りてくる。みちるは正気を失った状態で「東王杖が呼んでる」と言う。

紅子と鴇子も駆けつけ、四姉妹はどこかへいこうとするみちるのあとについて表へと出た。世界はやはり無音で、生き物の気配がない。

みちるが向かった先は、八幡宮。その境内からは、いやな気が立ち上っていた…。

 

 世界が“止まって”いる。
 香子の風変わりな表現は、しかし、藍子の腑に落ちた。今感じている違和感は、まさにそんな感じなのだ。
 少し、気持ちが落ち着いた。
「あたし、みちるの家にいるんだけど、こっちも変なの。みちるが具合悪そうにしてるし……。すぐにこっちこられる?」
『うん、いく。待ってて』
 返事の直後に電話が切れた。藍子はみちるに「すぐ戻るからね」と声をかけて階段を下り、玄関に立った。
 まもなく、駆けてくる足音が玄関ドアの向こうから聞こえた。
 ドアの鍵を開けて、扉を外へ開く。
「藍子」
「よかった、香ちゃん。みちるのところにきて」
「うん」
 二人が大急ぎで階段を上ろうとしたとき、当のみちるがふらりと階段の上に姿を現した。
「みちる! 大丈夫なの!?」
 駆け上がって声をかけた藍子の顔を、みちるは見ようともしない。顔面蒼白、うつろな表情でどこかを見つめたまま、独り言のように言った。
「呼んでる……、東王杖(トウオウジョウ)が呼んでる……」
「みちる……?」
 階段を下りようとするみちるに押し戻されるように、藍子と香子は階下へと下りた。
 ドアを開けたままの玄関の外から「藍子、いるの!?」と紅子の声がした。
「紅子ちゃん! あたしも香ちゃんもみちるもいるよ!」
 藍子の返事とほぼ同時に、紅子と鴇子が入口に姿を見せた。
「……東王杖……」
 藍子と香子をそれぞれ押しのけるようにして、みちるは紅子たちの立っている三和土(タタキ)へと進む。
「みちる、待って! どうしたの!? 東王杖ってなに!?」
 藍子が腕をつかんで問うが、みちるは振り向こうともしない。うるさそうに藍子の手をはずそうとする。
「呼んでるの、東王杖が……。邪魔しないで……。わたし、いかなきゃ――」
 紅子が藍子に歩み寄り、手を放すようにと視線で話しかける。藍子は眉をひそめつつも、そっと手を放した。
 みちるは三和土で靴を履き、そのままふらふらと表へ出ていく。
「ついていきましょう」
 落ち着いた声で紅子が言った。
 藍子と香子も靴を履き、四姉妹は、みちるのあとについて歩きだした。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


コメントを残す

おすすめ作品

マスクエリア 第五覆面特区〜二章 崩壊の足音(12)

ウパーディセーサ〈九〉

cat 〜その想い〜 3

ウパーディセーサ〈二十〉

幻幽綺譚<4> 白昼の喪服