幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

我が主君!!【15】

   

※作品中にガールズラブ的展開があります※

藍子たち姉妹は、それぞれに与えられた武具を身に着けた。みちるも正気に返り、五人で八幡宮へと歩きだす。
境内には大きな穴が黒々と口を開けており、五人は意を決してそこへ入っていく。
やがて開けた荒野に出ると、面識のない鎧武者が怨霊兵を率いて現れた。
「他人の領へ入ろうとするのに、自由に門を抜けられるはずもあるまい?」

 

 紅子は、左の腰に、紅色に光る太刀を佩き、右腰には箙を着け、手には、これまた紅色に光る弓を持つ。
 紅子の太刀は、例の、厳物造りの大太刀。いったん弓を地面に置いて、太刀の柄を右手で持って鞘から抜く型をしてみる。
「あらまあ、お見事。この太刀って、今のわたしの体格で苦労せずに引き抜けるぎりぎりのサイズになってるのね。すごいわ」
「へえ。気が利いてるわね」
 香子はそう言いながら、自らも香色に光る太刀を腰に着け、手には薙刀を持つ。
「あっ……みちる!?」
「みちるちゃん!」
 藍子と鴇子の声に、紅子と香子は揃ってそちらを振り向いた。
 藍子が、右手で、みちるの左頬をしきりとなでている。
「正気に返ったのね、みちる!?」
 みちるは不思議そうに目をまたたいて、目の前の藍子を見つめていた。
「……なにかあったの?」
 ゆっくりと辺りを見まわす。
「あれ? なんでこんなところにいるの?」
 言ってから、みちるは「おや?」という表情で首を傾げた。
「……あれ? でも、なんか……記憶あるかも? なにかに呼ばれてるような気がして、わたし、外に出たような……」
「正気を失ってたとき、何度も『東王杖が呼んでる』って言ってたわよ」
「東王杖?」
「源氏に代々伝わる刀なんでしょ?」
「さあ……?」
「『さあ』って……みちる――」
「待って、藍子。衣伏山の御曹司は、前世では結局、最後まで源氏嫡流の人々と交流を持たなかったようだから、知らなくて当然だと思うわ」
「あ、そうか。そう言えばそうよね」
「とにかく、みちるちゃんが正気に戻ってよかったぁ」
 香子が、ほっとしたように表情をゆるめた。
「――ご、ごめんね、みんな。迷惑かけた……?」
 うつむいて、小さな声で言うみちるを、藍子は軽く抱きしめた。
「心配はしたけど、迷惑なんてかけられてないわ」
「そうだよ、みちるちゃん。大丈夫」
 鴇子も言った。
「と言うか、みちるちゃんは、あたしたちをここまで連れてくる役目を担わされてたみたいよ?」
 香子の言葉に、紅子もうなずいた。
「そういうことよね、きっと」
 聞いてみちるは、にわかに厳しい表情になった。そして、不穏な気を放つ八幡宮へと素早く目をやった。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


コメントを残す

おすすめ作品