幻創文芸文庫 (β)

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SF・ファンタジー・ホラー

我が主君!!【17】

   

※作品中にガールズラブ的展開があります※

みちるの不思議な力で藍子の傷も治り、五人はひとまず前方にある廃墟になった砦までいこうと歩きだす。
そこへ、怨霊兵を率いた加部三郎兵衛が現れ、行く手をふさぐ。「三郎兵衛じゃないの。久しぶり~」とフランクに呼びかける香子に突っかかる三郎兵衛を見て、紅子たちはあることに気づき、ニヤニヤする。
やがて両者が戦いになるところへ、二人の騎馬武者が現れ、思ってもみなかったことを口にする…。

 

「さてと。それじゃ、先へ進みましょうか」
 と香子が言った。藍子が、
「でも、最終的にどこへいけばいいのかが分からないわよ?」
「そうなんだけど、だからと言ってここにいてもしょうがないでしょ」
「まあ、そうだけど」
 妹たちの顔を見比べて、紅子が、
「どちらの言うことも尤もね。それじゃ、ひとまずこうしましょう。まずは、あの、遠くに見える廃墟っぽい砦までいってみるの。次のことはまたそこで考えることにして」
「賛成。そこまでいくあいだにまた敵が出てくる可能性もあるし。出てきた敵が、なにかいいことを教えてくれないとも限らないしね」
 と藍子が言い、香子と鴇子も「あたしも賛成」「それでいいよ」と言った。
 藍子がみちるの顔を見て、「みちるもそれで大丈夫?」と訊ねた。みちるはしっかりとうなずいた。
「うん。みんなについてくよ」
「じゃ、まずはあそこを目指しましょう」
 五人は、辺りに注意を払いながら、視線の先にある、今は使われていないとおぼしき砦を目指して歩きだした。

 しばらくは何事も起きず、五人はときおり互いに視線を交わしつつ、普段どおりの足取りで歩いていった。
 ふと、鴇子が言った。
「ねえ……、おなかすいたり喉渇いたりしないね」
 紅子が「そう言えばそうね」と独り言のように呟いた。
 香子が、
「アレかしらね、やっぱりここって怨霊仕様になってる世界なもんで、そういう、空腹とか喉の渇きとか、生きてる人間だからこそっていう部分が省略されてるのかも?」
「ありうるわね」
「とすると、トイレも必要なければ、睡眠もとらなくてよかったりするのかな?」
 みちるも言った。
「そうかも」
「だけど、そういうのって不健全じゃない? おいしいものを食べたいっていう欲求すらないのに、他人を自分の思いどおりにしたいっていう欲望はある世界なんて、どうかしてるわよ」
「だよねぇ」
 言いたいことを言い合いながら、五人は歩いていく。
 緊張感のない会話は、じつのところ、“そうは言っても払拭しきることのできない不安感”の表れでもあって。
 と同時に、逆に、「まあ、なんとかなるでしょ」という“生きている自分たちへの自信と信頼”の証拠でもあった。

 

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