幻創文芸文庫 (β)

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SF・ファンタジー・ホラー

我が主君!!【20】

   

※作品中にガールズラブ的展開があります※

野平五郎の偽者を片づけた直後、再び敵の軍が現れる。
紅子たちと三郎兵衛が太刀薙刀を振るうのを、後方から弓で支援する藍子。その隣にいるみちるへと、敵将・守山平太の矢が向く。
藍子はとっさにみちるをかばい、負傷する。みちるは驚き、半べそをかきながら藍子に治癒の業を施して…。

 

 弓を下ろした紅子が、香子と藍子に向かって言った。
「鎧の、栴檀板(センダンノイタ)と鳩尾板(キュウビノイタ)が逆だったわ」
「あ、そう言えば――、最初に見たとき、なんか変だなって違和感を感じたのはそれだったんだ……」
「太刀も、右に佩いていたな」
 三郎兵衛も言った。
「つまりあれは、本物の五郎どのではなかったのよ。……推測すると、鏡像から作った偽者ってところかしらね?」
「へえー、そんな技が使えるんだぁ。今度から敵に会ったら左右よく確認しないと」
「それはちょっと違うよ、香ちゃん。例えば久々に会った味方とかには注意しないとならないけど、敵なら左右が正しくても正しくなくても問答無用に斬り捨てるだけだもん」
「あ、そっか」
 藍子が、いったん弱まった武具の輝きが、再び増すのを見て、冷静に「打って出る必要がありそうね」と言った。
 紅子がうなずいた。
「囲まれて不利になる前に、こちらから仕掛けましょう」
 三郎兵衛はすでに兜を着けている。
 四姉妹とみちるは立ち上がった。
 藍子がみちるの手を取り、瞳を見つめる。ほほえんで、「一緒にいられるって、幸せね?」と、冗談めかして言った。みちるはくすりとして、素直に「うん」と応えた。
「どんな状況でも、藍子と一緒がいい」
 藍子は満足げに前を向いた。
 香子は三郎兵衛に向かって朗らかに言う。
「アンタのこと、頼りにしてるわよ」
「よしきた」
 六人は辺りに注意を払いながら門を駆け出た。

「ジャストタイミングだったわね」
 濃い灰色のもやの前に、今まさに展開している怨霊兵たちを目にして、紅子が言った。弓をみちるに手渡し、自らは太刀を引き抜いて、藍子に言う。
「藍子はみちるちゃんといて、余裕があれば弓で援護して」
「分かったわ」

 怨霊兵たちの脇には、乗馬の守山平太がいた。
 それをちらりと見て、紅子が鏑矢をつがえた。
 空に向けて放たれた矢は高く鳴って、両陣営は刃を交えようと一気に動いた。
 砦を背にして様子を見守る藍子は、弓に征矢をつがえる。
 味方はまだ、比較的固まって戦っている。
(大将を倒せると都合がいいんだけど……)
 しかし、小賢しくも守山平太は、いつの間にか、藍子と紅子たちを結ぶ線上へと移動していた。これでは、流れ矢を気にかけずに守山平太を射ることはできない。
「生意気ね……」
 苦く呟いて、紅子たちからは遠い場所にいる怨霊兵に狙いを定める。
 矢を放つ。
 鋭く空を切り裂いて飛んだ矢は、見事に怨霊兵の一体を霧散させた。
 それを確認しつつ、藍子は次の矢をつがえる。
 狙いを定めて、手を放す。
 もう一体、怨霊兵が消え散った。

 

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