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SF・ファンタジー・ホラー

我が主君!!【21】

   

※作品中にガールズラブ的展開があります※

荒野の彼方から馬に乗って現れた人物は、「敵じゃないから矢を射たりしないでね!」と藍子たちに叫ぶ。
近づいてきたその人の顔を見て、藍子と香子は目を丸くした。「あの人、『昼夜』の陽子サンでしょ!?」

陽子は、六人のそばまできて馬を下り、驚くべき自己紹介をする。
「あなたたちと一緒で、わたしも過去世を生きた人間なの。源平争乱期に生きた前世のわたしの名前は、巴よ」

 

 鴇子は、荒野の先をじっと見つめながら言った。
「紅ちゃん。あっちから、なにかくるよ」
「え?」
 紅子が鴇子の横に並んで、鴇子の指さす方向を見る。
「――馬だわ」
 徐々にはっきりと見えてくるその何者かを見つめて、紅子が言った。
 確かに、それは、馬に乗っただれかだった。
「鎧は着けてないみたい」
「そうね。でも、馬具はそれなりに立派そうかしら」
「なんか……女の人っぽい?」
 鴇子の言うとおり、その人物がどうやら女性であるということが分かる位置まで近づいてきて、すると、馬上のその人は「敵じゃないから矢を射たりしないでね!」とこちらへ向かって叫んだ。
 「ああ言ってるよ?」と、鴇子が紅子の指示を仰ぐ。紅子は、「油断はしないで。太刀はすぐ抜けるようにしておいてね。とりあえず、様子を見るわ」と答えた。
 三郎兵衛が声を出した。
「おお、あの鴾毛(ツキゲ)は、田丸二郎太めが乗っていた馬ではないか?」
 田丸二郎太を射た当人である藍子も立ち上がり、馬を見た。
「そう言われると、そうのような気もするわ。あのとき、乗り手のいなくなった馬は一人でどこかへ走っていったから……、あの人が拾ったのかしら?」
「そうかも知れんな」
 このころには、紅子たちの目に、馬上の人物が自分たちと同じような現代の服装をしていることがはっきりと見えていた。
「馬に乗ってる人、洋服だねえ」
 鴇子が独り言のように言った。
 じっと、馬上の人物を見つめていた香子が、
「って言うか……、ねえ藍子、あれってもしかして――」
 香子と藍子は顔を見合わせた。藍子も目を丸くしていた。
「香ちゃんにもそう見える?」
「やっぱりそうだよね!?」
「だと思う!」
 そして、二人同時に言った。
「あの人、『昼夜』の陽子サンでしょ!?」
 紅子と鴇子とみちるが、揃って「え?」という顔になった。
「本当なの?」
「ホントだって! ほら、見て!」
 香子の言葉に、みちるも、
「そう言えば、テレビとか雑誌で見る陽子サンにそっくりだよね……」
「絶対本人だよ! あたし、訊いてみるから!」
 香子は早くも頬を上気させて、そう主張した。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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