幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

我が主君!!【22】

   

※作品中にガールズラブ的展開があります※

藍子たちの前に現れた敵は、怨霊兵を率いた野平五郎だった。両者は刃を交えるが、五郎は三郎兵衛に「おぬしもわし同様に騙されていたのだ。話を聞いてくれ」と言われて、応じる。
話し合いの中で、前世で残した歌稿を世に出すべく武藤右馬允についていると語った五郎に、陽子が言う。「その約束はうそよ。だって――」
事実を知った五郎は愕然として…。

 

 荒野の方向を振り向いた七人は、例の濃い灰色のもやが前方に広がるのを見た。
 五十~六十体ばかりの、顔のない青白い怨霊兵たちが展開する。
 そして、率いる将は――、
「五郎おじさんだ」
 鴇子の声に、三郎兵衛が、「うむ。今度は本物らしいな」と言った。
 四姉妹はそれぞれ武具を手に取り、迎え撃つ準備をする。
「みちる。弓を預かっててくれる?」
「うん」
 藍子の手から、藍色に輝く弓と箙を受け取りながら、みちるは小声で「気をつけてね」と言った。
「大丈夫。あたし、強いもの、みちるがいる限り戦えるわ」
 にっこりと、見惚れるような笑みで、藍子は応えた。少し安心する気分になって、みちるもほほえむ。
 一方、紅子は鴇子に自らの弓を預けながら、「みちるちゃんと陽子サンを守っていて」と言った。鴇子はこっくりとうなずく。
「分かった」
「一人で大丈夫ね?」
「うん。平気」
 その様子を見届けた藍子が、「じゃあ、いくわよ」と言って先頭切って駆けだした。すぐに香子がつづく。戦いの場は、少しでもみちるたちのいる場所から離したほうがいいという判断だ。
 二人のあとを、三郎兵衛と紅子が追う。
 野平五郎は、守山平太のように後ろに隠れるようなことはせず、自ら太刀を取って前に進み出、怨霊兵どもに指示を下した。
「敵はたかだか四人だ! 屠(ホフ)ってしまえ!!」
 これを聞き、香子が不満の色いっぱいに声をあげた。
「生意気だわ! 立派な鎧の指揮官はともかく、顔もない青白いのになんかやられるもんですか!」
 言葉とともに見事な身のこなしで振り上げられた薙刀の刃が、鋭く打ち下ろされ、香子に殺到した怨霊兵たちの、最初の二人がたちまちに霧散した。
 少し離れた場所で藍子も太刀を振るう。三郎二郎の魂は、転生後の藍子の肉体をも巧みに操り、数の上での不利を不利のままにしておかない。藍色の光を散らして太刀が振り下ろされ、薙ぎ払われる。そのたびに藍子の周囲には空間ができていく。前進を阻もうと新たな怨霊兵が立ちはだかって刃を向ければ、藍子はその懐へ踏み込んで青白い体に切っ先を突き通す。致命傷を得た怨霊兵は音もなく霧と散る。
 香子を挟んで藍子とは反対側で、三郎兵衛も戦っている。女性の肉体を生かした立ちまわりをする香子や藍子たちに比べ、三郎兵衛は男性らしく迫力に満ちた所作で太刀を振り上げ、振り下ろす。斬られた怨霊兵たちが次々消えていく。

 

-SF・ファンタジー・ホラー