幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

我が主君!!【24】

   

※作品中にガールズラブ的展開があります※

女鎧の置いてある場所へ近づいた藍子たちの前に、また敵が現れた。陽子とみちるはその場を離れる。
怨霊兵を率いるのは、守山平太ら三名の騎馬武者。間もなく戦闘が始まり、六人は懸命に太刀薙刀を振るう。
苛立った平太が怨霊兵に命じる。「敵一人に三人五人で一遍にかかって、斬り捨てよ!! まずは紅色の得物の女からゆけ!!」
危機に陥った紅子を救ったのは…。

 

 やがて遠くに見えてきた、ごく低い台地の、その端になにか小さな小屋のようなものがあるのを、陽子が指さした。
「あれなの。祠みたいな観音開きの小さな建物があって、その中に鎧がしまわれていたの。傷んでもいなければほこりもかぶっていなくて、きれいなもんだったわ」
 そして一行は、歩を進めるごとに徐々に近づいてくるその建物へと急いだ。
 ――が。
 そんな彼らの眼前に、また、例の濃い灰色のもやが広がりだした。
 足を止めた四姉妹は、輝きを増した自分たちの武器を確認し、厳しい表情で顔を見合わせた。
 陽子がみちるの手を引いて、「鞍に上がって!」と言った。みちるは戸惑う。
「でも……わたし馬なんて乗ったことない――」
「乗ったことなくてもいいから、早く!」
「そんな……っ、そんなの無理……」
 弱気に後じさろうとするみちるの後ろに、藍子が駆け寄った。肩に手をまわし、「乗れるわ」と励ました。
「思い出して、みちる。過去世で馬術は得意だったじゃない」
「藍子……」
「大丈夫。乗れるわ」
 思い切ったように、みちるは鞍に手をかけた。
 すると、その瞬間に突然、どう身をこなせばいいかが脳裡にひらめいた。
 高さにやや苦労はしたものの、みちるはもはや気後れすることもなく、身軽に鞍に上がった。渡された手綱を握る仕草も板についている。陽子が満足げに笑顔になる。
「さすがは御曹司ね。じゃ、わたしたちはみんなの邪魔にならないように弓矢の届かないところまでいくわよ!」
 みちるに代わって鴇子の差し替えの太刀を預かった陽子が、素早く馬の尻を叩いた。馬は動きだす。
「戦いのほうは任せたわよ!」
 振り向いて陽子が言うのに、紅子がうなずいた。
「分かったわ。二人とも気をつけて」
「みんなもね!」
 陽子は馬を追って駆けだしていった。

 ほどなく戦場となる場所を、急ぎ離れていく二人を見送って、四姉妹と三郎兵衛と五郎は、限界まで濃くなったもやの内から怨霊兵たちが現れるのを待つ。
 藍子と紅子は弓に矢をつがえ、すぐに引き絞れるようにして前方を見つめる。藍子は鏑矢を。紅子はそれを見て、征矢をつがえた。
 展開していく青白い怨霊兵たちを見て、五郎が「多いな」と低く言った。三郎兵衛がうなずいて、「百は下るまい」と返す。
 兵らの後ろに、指揮する将が現れた。
「あ、新顔がいる」
 鴇子が言った。
 それぞれ馬にまたがった、三人の甲冑姿の武士。
 一人は守山平太だ。左手に弓を持たず、それどころか手綱さえ右手でのみ握っているのは、おそらくは三郎兵衛の刀子による怪我のせいだろう。
 残り二人は、鴇子の言うとおり、見たことのない人物だった。
 藍子が「こっちからいくわよ!」と叫ぶなり、空に向けて鏑矢を放った。
 蟇目が高らかに鳴り、開戦の合図が告げられた。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


コメントを残す

おすすめ作品

cat 〜その想い〜 20

風車のまちのユートピア<1>

記憶と知恵のカラマリ(3)

サクリファイス クロニクル編5

アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第48話 受け入れる、その悪意も全て