幻創文芸文庫 (β)

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SF・ファンタジー・ホラー

我が主君!!【25】

   

※作品中にガールズラブ的展開があります※

怨霊兵との戦闘の中、奮戦していた藍子が傷を負った。戦闘後、鎧のある小屋のそばで、藍子はみちるから治癒の業を受ける。
一方、陽子は小屋を開けた。が、あったはずの女鎧は消えていた。陽子は落胆する。
ひとまずは小屋の中で体を休めようと、藍子とみちるは中へ入った。途端、扉が勝手に閉まり、二人は外部と遮断され…。

 

 守山平太の下した命令を聞いた藍子は、とっさにその場で足を止め、斬り合いに備えて体勢を整えた。
 息つく暇もなく、怨霊兵が勢いよく斬りかかってきた。
 太刀で受け、押し返す。
 過去世と違い、今は女の身。力勝負に持ち込まれたら不利なのは分かりきっている。一瞬たりとも足を止めずに、移動しつつ相手の隙に切っ先を突き出すことが最善だ。
 入れ替わり立ち替わり攻撃してくる敵に、反撃する。
 藍色に光る太刀の刃(ハ)が触れると、相手は霧と散って消えていく。この不思議な武具を手にしている限りは、かすり傷を負わせただけでも消滅させられることが分かっている分だけは、藍子が有利だ。
 けれど、いかんせん、数が違う。
 額に汗を浮かべ、息をはずませながら、藍子は夢中で太刀を振るう。
 と、そのとき。思いも寄らぬ方向からの攻撃を受けた。左肩に衝撃が走った。
 踏みこらえた右足を軸にして勢いをつけて体をまわし、その敵の胴を横ざまに払った。音もなく、敵は消えていく。
「藍ちゃん!!」
 鴇子の声を聞きながら、砂に片膝をついた。
「藍子!」
 香子が、藍子の周りにまだいる敵を薙刀で牽制し、怪我をした妹に駆け寄る。後じさった敵は、鴇子が次々太刀にかけ、消滅させる。
 混乱のさなか、守山平太は姿を消していた。
 五郎と紅子と三郎兵衛が、残っていた五体ばかりの敵を片づけ、辺りはようやく静かになった。
「藍子、大丈夫!?」
 香子が藍子の傍らに屈み込み、痛みに眉をひそめる妹の顔を覗き込む。
「大丈夫――」
 服が裂け、肌にひと筋ついた傷口からは赤い血があふれるように流れ出している。
 藍子は、傷口がなるべく動かないように左腕を右手で押さえつつ、ゆっくりと立ち上がった。
 歩み寄った紅子が言った。
「歩ける?」
「うん」
「じゃあ、あの小屋のそばまで先にいきましょう。陽子サンとみちるちゃんもあそこへ連れていくから」
「分かったわ」
「みちるちゃんがくればもう大丈夫だから。あと少しの辛抱よ。がんばって」
 藍子に言うというよりは自分に言い聞かせるように、紅子はそう言った。藍子はうなずいて、香子と鴇子に守られるようにして、台地の上の小屋を目指して歩き始めた。彼女たちの後ろに、三郎兵衛。
 紅子は、戦いが一段落したのを見て再びこちらへやってこようとしている陽子とみちるのほうへと歩きだす。彼女を守ろうとするかのように、五郎が斜め後ろをついていく。
 ほどなく陽子たちと合流すると、紅子はすぐさま「小屋へ」と促した。
「妹たちは先にあっちへいってるわ」
「分かったわ」
 陽子とみちるがうなずいた。紅子は馬上のみちるを見上げ、「藍子が怪我をしたわ」と告げた。
「!?」
 みちるの表情が変わった。
「わたし、先にいきます!」
 言うなり、みちるは慣れた手つきで手綱を操り、馬の鼻を小屋の方向へと向け、軽く馬の腹を蹴った。
 乗り手の指示にしたがって、馬は砂を蹴って走りだした。

 

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