幻創文芸文庫 (β)

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SF・ファンタジー・ホラー

我が主君!!【26】

   

※作品中にガールズラブ的展開があります※

小屋に閉じ込められた藍子とみちるは、開き直って束の間の休息をとる。
藍子が仮眠から目覚めたのち、奥の壁が扉になっていることに気づいた二人は、その扉を開けた。
中には、消えたはずの女鎧があった…。

 

 一方、みちると藍子は、暗闇の中で戸惑っていた。
「紅子ちゃん! 香子ちゃん! 鴇子ちゃん……!!」
 みちるは、いきなり閉まった扉を懸命に叩き、外にいるはずの紅子たちに呼びかけてみるが、一切返事がない。
 「ダメみたいね」と言って、藍子は一つため息をついた。
「よく分からないけど、この小屋があたしたちを外に出す気になるまで、出られないんじゃないかしら?」
「……うん……、そうかも」
 ふと、弱々しい光が灯った。
 奇妙なことには、光源がない。どこから照らされているのか分からないのに、ただ、狭い小屋の中がぼんやりと薄明るくなっている。
「怪しいなぁ……」
 呆れたような調子で、藍子が言った。
「でも、少なくとも真っ暗闇よりは居心地いいわね。とにかく、あたしはちょっと休むわ」
「うん。しばらくはここから出られそうもないし、せめてゆっくり休んで」
 二人は、小屋の横の壁に歩み寄った。藍子は箙と太刀の緒をほどいて武具をはずし、そこに腰を下ろした。壁に背中をもたせかける。
「藍子。横になる?」
 みちるの言葉に、藍子は視線をみちるの顔に向ける。
「……膝枕してくれるなら、横になるわ」
 甘えた口ぶりに、みちるは小さく笑う。
「いいよ。そんなことくらい、いくらでもしてあげる」
「……うん」
 藍子はうれしそうにほほえむと、いそいそと座る位置をずらした。両脚を前に伸ばしたみちるの、膝に近い辺りの腿に、軽く頭を載せる。快適な場所を探して、しばしもぞもぞとする。
「この辺がいいみたい。みちる、脚痛くない?」
「平気だよ」
「ちょっと寝てもいい?」
「うん。そうして」
 みちるがそっと藍子の髪をなでる。
 その感触に、気持ちよさそうにくすんと小さく鼻を鳴らして、藍子は目を閉じた。
 そして、そのまま眠りに落ちた。

 穏やかな藍子の寝顔を見つめて、みちるはしばらくぼんやりとしていた。規則正しい静かな呼吸に、安心する。
 ――そうして、どれくらいが経ったろうか。
 なにもないときの時間の進みは遅く感じるから、まだ五~六分か……、それとも、十分近くは経っているだろうか?
 ふと、視線を動かした。
 すると、藍子の左肩の切り裂かれた服地が目に入った。
 先刻治癒させた裂傷のことを、いやでも思い出す。
(今までで一番ひどい傷だった……。血があんなに出て……。藍子は強いのに、どんなことがあってあんな怪我をしたんだろう……?)
 きっと痛かっただろう。驚いただろう。
 第一、怪我自体が治っても、今こうして藍子は疲れ果てて眠っている――。ということは、治癒させることはできても、やはり肉体にダメージがなくはないのだ。
(なんで藍子がそんな目に遭わなくちゃいけないの……?)
 この先も、藍子が傷つかないとは限らない。
(たとえそれをわたしが治しても、藍子はまた戦って傷つく……。そんなこと、いつまで繰り返すの……? もう帰りたいよ……、藍子と一緒に、もとの世界に帰りたい……)
 そう思ってしまったら、急に悲しくなった。
 涙があふれてきた。
(もういやだよ……、藍子に戦ってほしくない……。藍子につらい思いさせたくないよ……)
 藍子を起こしたくないので、しゃくり上げるのはこらえる。
 けれど悲しい気持ちは深くなる一方で、涙は次から次とあふれてきた。

 

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