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SF・ファンタジー・ホラー

我が主君!!【27】

   

四姉妹はそれぞれに、発見した女鎧を着たいと思うが、鎧は着用者を選ぶかのような態度に出る。
やがて、鎧のあった部屋の奥壁がまたも扉になっていることに気づいた紅子たちは、五郎と三郎兵衛を呼び、その扉を開けようとする。
開いた扉の向こうにあったのは、思いも寄らぬ光景だった――。

 

 藍子とみちるの導きで、小屋の奥の、一段下がった広い部屋に入った紅子と香子と鴇子は、中央に置かれた女鎧を見て「わあ!」と歓声をあげた。
「すてき!」
「かっこいいねえ!」
 陽子が満足げにほほえむ。
「春の花の匂縅、いいでしょ? お気に入りだったのよ、この鎧」
「わたし、着たいなぁ」
「下の櫃(ヒツ)に、鎧直垂とか脛巾(ハバキ)とかも一式あったわ。開けてみましょう」
 陽子はそう言って、櫃の上に載っていた鎧を抱え、脇へ下ろした。
 そして、櫃のふたに手をかけた。が、
「あら?」
 ふたが開かない。
「なんでかしら? 前に開けたときは簡単に――」
 言いながら、もう一度力を込めるが、やはり開かない。
「紅子ちゃん、開けてみてくれる?」
「ええ」
 紅子が代わりに試してみるが、ふたは動かない。
「えー、なに? もしかしてホントに“シンデレラの靴”状態?」
「じゃあ、次は香ちゃんがやってみる?」
「いいわよ」
 鴇子の言葉に、香子は勇んで櫃の脇に屈み込み、ふたに手をかけた。
「んん――、開かないなぁ。あたしもダメか」
「わたしも試す」
 鴇子が試みるが、やはり開かなかった。
「ってことは……」
 みんなの目が、一斉に藍子に向かった。
「あたし?」
 藍子は姉妹たちを見て、陽子を見て、みちるを見る。
「開けてみて!」
 おもしろそうな表情になって、香子がせかす。
「うん。じゃあ――」
 藍子は櫃の脇に膝をついて、ふたに手を伸ばした。
 あっさりと、ふたははずれた。
「やっぱりそうかぁ」
「これって藍ちゃんの鎧だったんだね」
「残念だけど、鎧が着る人を選ぶんじゃ仕方ないわね」
 開いた櫃の中から、藍子は鎧直垂だの貫(ツラヌキ)だのを次々と取り出した。
 「じゃあ、藍子ちゃんに着てもらいましょ」と陽子が言った。
「鎧の着方って覚えてる、おねえちゃん?」
 香子に問われて、紅子がわずかに考え込む。
「……ええとね……、思い出してきたわ」
「あたしもだんだん思い出してきたよ」
「服の上からでいいわよね」
 言って、陽子が平絹の小袖を広げた。鼻を近づけてみて、
「ほこり臭くはないわね。それどころか、過去世でわたしの好きだった香の香りがするわ。伏籠(フセゴ)に着物を掛けて、香りを焚きしめてたのよ」
「へえー。さすがは女の人だね。あたしたちは過去世では男だったし、無骨者自慢の坂東武者だったから、そんなのしたことなかった」
 と、香子が感心したように言った。
「じゃ、藍子ちゃんはそのまま立っててね」
 陽子が、藍子の腕に小袖の袖を通す。前を合わせ、腰紐を締める。
「大口袴は省略でいいわね」
「そうね」
「藍ちゃん、着せ替えのお人形さんみたいだね!」
 鴇子が言って、鎧直垂と共布の袴を広げる。

 

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