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SF・ファンタジー・ホラー

我が主君!!【28】

   

※作品中にガールズラブ的展開があります※

陽子とみちるをその場に残し、四姉妹と三郎兵衛、五郎は砦へ向かうことにした。
近づくと、扉の門が開き、怨霊兵を連れた守山平太が現れた。「中で御方さまがお待ちだ。入れ」
砦の門を入った紅子たちの前で、御座所の御簾がするすると上がり、一人の女が姿を見せる。その正体を聞いた六人は瞠目する――。

 

 岩と砂を踏んで低い台地を下りた八人の目に、こちらへ向けて一人で駆けてくる馬の姿が見えた。
「見たことのある連銭葦毛(レンセンアシゲ)だな」
 と三郎兵衛が言えば、香子が、
「なに言ってんのよ。アンタが倒したあの名前の分からない鎧武者の乗ってた馬じゃない」
「ああ、そうか。どうりで見覚えがあるはずじゃ」
「ちょうどいいわ。捕まえて、わたしが乗るわ」
 陽子が言って、やがて近づいてきた馬の手綱を捉えた。
「これで、わたしと御曹司は足手まといにならないで済むわね。――なにかあったら一目散に逃げて絶対に捕まったりはしないから、みんなはわたしたちを気にせずに戦って」
 陽子はみちるを振り返ってほほえんだ。
「みちるちゃんも、それで大丈夫よね?」
「はい」
 藍子の靴を左手に、右手で鴾毛の口を取っているみちるは、意志に満ちた瞳でしっかりとうなずく。
「ありがとう。じゃあ、陽子サンとみちるちゃんは、ここで待っていて」
「ええ。信じて待ってるわ」
 陽子が紅子に答えた。
 みちるは、視線で語りかけるように藍子に目を向けた。藍子は安心させるようににこっと笑んだ。
「それじゃ、いってみるとしましょうか」
 香子が言った。
 陽子は馬の首を軽くなでてから、軽やかに鞍に上がった。みちるは藍子の靴を、そばにいた香子にいったん手渡し、こちらも鞍に乗って、靴を再び受け取った。
 鴇子が「いってくるね」と言って二人に手を振った。陽子が「みんな、きっと無事でね!」と手を振り返した。
 四姉妹は力強い表情で歩きだす。三郎兵衛と五郎も。
 みちるが鞍の上で身を伸ばして、声をあげた。
「藍子! 約束だよ!」
 歩きながら振り向いて、藍子が応えた。
「大丈夫、守るわ!」
 藍子のそばを歩いている三郎兵衛が、藍子に訊ねた。
「約束とはなんだ?」
「あたしがみちるのもとへ必ず戻るっていう約束。過去世では、約束が守れなくてすっごく恨まれたのよ。だから、今度こそ守るの」
「そうか」
 二人のやりとりを聞きながら、五郎は物思わしげに前方を見つめていた。

 緊張しながら歩くうちに、砦が近づく。
 と。
 両脇に矢倉のついた大きな門の、扉が開いた。六人は足を止めた。
 馬に乗った守山平太が、五十体ばかりの怨霊兵を従えて悠然と出てきた。
 それを見て香子が、「怪我はよくなったみたいね」と呟いた。
「ホントだ。手綱を両手でちゃんと持ってる」
「治るまでの時間とか……どういう基準なのかがいまいち分からないわね」
「うん」
 門の両側に兵を展開し終えると、平太は六人のほうへ馬の首を向けた。そしてもったいぶった様子で声を張り上げた。
「悪若四天王。中にて御方さまがお待ちだ。入れ」
「入るのはいいけど、御方さまってだれよ?」
 と香子が言った。
「お会いすれば分かる」
「中に入ろうとした途端に、そこに引き連れてる青白いのが攻めかかってきたりするんじゃないでしょうね?」
 藍子が言えば、平太は「そのような真似はせぬ」と応じた。
 鴇子が紅子の顔を見て、
「ああ言ってるよ? どうする?」
「まあ、それなら一応信用するとして、だけど向こうの目的はわたしたちじゃなくてあくまでも御曹司だから、油断はならないわね。わたしたちへの扱いは悪くて当然と思わないと」
「そうだね」

 

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