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SF・ファンタジー・ホラー

我が主君!!【29】

   

※作品中にガールズラブ的展開があります※

「わらわに逆らうこの者どもを片づけよ!」二位尼が右馬允に命じ、砦の庭は一気に戦場と化す。
藍子は平太と斬り結び、平太を倒すや、二位尼へと向かう。
一方、五郎は右馬允と斬り合いになる。
そして、戦いの結末は…。

 

 立ち上がった右馬允は、守山平太に「この者どもを片づけよ!」と命じた。
 藍子が弓を捨て、太刀を抜いた。
「香ちゃん、鴇子、援護して!」
 叫ぶや、藍子はまっすぐに守山平太へと駆け寄った。とどめようと襲いかかる怨霊兵たちを、香子と鴇子が次々に斬り倒す。
 平太も太刀を抜き、藍子へと斬りかかる。
 金属が打ち合い、二人は飛びすさる。
「何度も何度も、よくもあたしたちの進路を邪魔してくれたわね!」
「うるさいわ! 鎧なぞ手に入れて気が大きくなったか、小娘が!」
 激しく斬り結び、飛び離れ、また打ち合う二人の様子を、錦の縁(ヘリ)をつけた畳の上で、時子が苛立たしげに見守っている。
「大のおのこがおなごの一人になにを手こずっておるか。情けなや」
 時子は膝もとに置いてあった数珠を取り上げ、胸の前で押し揉んだ。
 数珠にまとわりつくように、青緑色の妖しい光が生まれた。
「わらわの言うことを聞かぬ憎き娘め――、若さが力と思うておる思い上がりの娘め……、手足の自由を奪われてしまうがよいわえ」
 時子の手もとでパリパリと火花のように鳴った妖光は、弧を描いて藍子のもとへと延びた。
 その瞬間、藍子の身にまとう女鎧が、真っ白な光を放った。その清らかな白に触れた青緑色の光の鞭は、たちまちにはじけて消えた。
「おのれ……!」
 歯噛みする時子。
 藍子の鎧の突然の発光に狼狽した平太は、一瞬足もとをよろめかせた。藍子はその隙を見逃さなかった。
 ぐっと身を低く沈め、平太の鎧の前の草摺(クサズリ)が浮き上がったところで、腿を横薙ぎに払った。
 平太がうめきをあげ、動きを止めた。数瞬ののち、彼の姿は四肢の先から霧の粒へと変わっていった。
 藍子はそのまま階を駆け上がった。時子も立ち上がった。
「下がれ! 憎き源氏の郎党め……!」
「東王杖をよこしなさい!」
 時子の周囲にいた侍女たちが突如、燃え立つ青白い炎に変わった。
 ひるんだ藍子が足を止める。炎に守られた時子は高く笑い、再び数珠を押し揉んだ。
「そなたに効かねば、鎧の守護のない者を狙うまでじゃ」
「!?」
 次の一瞬、藍子はまっすぐに時子の懐へ飛び込んだ。
 青白い炎がぼおっと音をたてて燃え上がった。
 が、巴御前の鎧からは再び白い光が発せられ、青白い炎を食らうように包み込んだ。
 藍子は大きく踏み込み、左手で時子の数珠をつかんだ。
 時子の顔が怒りと憎しみで醜くゆがんだ。
「なにをするか……!」
 次の言葉は発せられなかった。
 藍子の右手に握られた藍色に輝く太刀が、時子の腹を貫いていた。
 時子は藍子を正面から睨みつけた。
「く……くちおしや――」
 毒を吐くがごときうめきを最後に、時子の姿はモノトーンの霧と化して、さらさらと散っていった。
 二人を囲んでいた青白い炎も急激にしぼみ、間もなく消えた。
 藍子はその場に屈み込んだ。金色(コンジキ)の装飾が美しい太刀を手に取り、庭を振り返った。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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