幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ラブストーリー

Black Blood Christmas #1【4人の過ち】

   

自分の本当の気持ちを紛らわすように恋人と付き合う男

兄から向けられている感情に気づきながら普通の恋を求める女

過去より今、これから先を新しい恋で歩んでいきたいと願う男

男の過去も罪も含めて愛したい女

そんな4人の恋の糸が複雑に絡まっていく

人はどうしてこんなにまで欲深く恋愛に執着するのだろう

例え誰かを傷つけたとしても手放したくない「愛」がある

奪われた「愛」の為に
守る「愛」の為に
今、復讐の幕があがろうとしていた…

 

#1-1【紅 弓子の過ち】

「お姉さん、いくら?」

 恋人の田沢政幸(たざわ まさゆき)を妹に返してしまった後、紅弓子(くれない ゆみこ)はかなりの時間、公園の噴水を眺めていた。

 最初は仲のいい恋人の語らいで賑わっていたというのに、いつの間にか公園には弓子だけが取り残されている。

 いつでも帰れるのに帰らないのは、渡しそびれた彼へのプレゼントが原因のひとつ。

 弓子が真新しい洋服、しかもそれなりにお金がかかっているというのは、普通にものを見る目を持っていればわかる。

 噴水に投げ入れてやろうと、何度も握り締めたけれど、楽しい思い出がそれを邪魔していた。

 そんな弓子に声をかけたのは、自分とひと回りも下だろう青年だった。

 寒い夜に薄着でいるのが普通に見せてはくれない。

 家出?

 そんな予感がしたけれど、弓子の口から出たのは、意外な言葉だった。

「今夜はお姉さんが君を買うわ。いくら?」

 弓子の言葉に、青年は背後を振り返る。

 いかにも――という男がふたり、その男が電話でなにやら話をすると、青年に耳打ちをして立ち去っていった。

「許可が下りたよ。僕を味わって、お姉さんが値段つけてよ」

 青年の言葉に、弓子は寂しげな笑みを浮かべる。

「お姉さん、悲しいの?」

 青年の唇が弓子の唇と重なる。

 その晩はじめて弓子は感情とは関係ない相手を受け入れた。

 直接触れる肌の温もりが、とても心地いい。

 こんなにも人恋しかったのかと、弓子の頬を雫が伝う。

「泣かないで、お姉さん。僕が暖めてあげる。朝まで抱いていてあげる」

 名前も知らない、金だけの関係でしかない相手だったけれど、この青年の言葉は弓子が田沢に言って欲しかった言葉を言ってくれる。

 金で買った言葉だけど、それだけでも嬉しい。

 クリスマスイヴ、恋人に置き去りにされた女には、ちょうどいい情事なのかもしれない。

 絡んだ腕、髪を撫でる指先。

 仕草ひとつひとつが愛しく感じられる。

 クリスマスが見せるかりそめであると知りながら、弓子はこの名前も知らない青年の身体を何度も求めた。

 そして陽が昇る前、数枚の万札枕元に置いて、かりそめと別れを告げた。

 

-ラブストーリー


コメントを残す

おすすめ作品