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ラブストーリー

Black Blood Christmas #3【破滅へのカウントダウン】

   

さつきの為?
それとも自分の為?

須藤智の魔の手が田沢夫妻に忍び寄る

緩やかに、そして確実にふたりを落していく

そうとは知らず、須藤からの純粋な好意と信じて疑わない弓子

狂っている歯車が静かに加速していく…

 

 その年のクリスマス。

 一年前に全ての歯車が狂ったクリスマスとは違い、須藤は珍しく実家に身を寄せていた。

「居場所、わかりましたよ」

「時間かかったな、あんたにしては」

「仕方ないですよ、智(さとし)さん。相手は日本じゃないんですよ?」

 警察に連れて行かれてから数週間後、須藤の周りをやたらと嗅ぎ回る人物が数人。

 依頼主は田沢政幸だろう。

 それ以外、須藤を付回したって、何の得にもならない。

 都内でありながら、日本家屋を漂わせる古風な造りの屋敷と庭園。

 須藤はあまり実家のこの風景が好きではなかった。

 子供の頃、この実家にいたが、記憶は母の泣き顔だけ。

 家が家だけに、子供らしい子供時代を過ごした記憶もない。

 小学校に上がる前、母方の親戚に期限付きの里子に出される。

 こっちに戻ってきたのは、高校を卒業してからだが、実家に戻らずマンションを借りて大学に通っていた。

 時々、黒いリムジンが横付けされ須藤智を出迎える厳つい男たちから連想され、あいつの家、やくざだぜ――なんて噂が流れてしまっていた。

 弓子が聞いた噂もそれなのだが、遠からず近からずである。

 確かにやくざだったが、それは先代、須藤智の爺さんまでのこと。

 ちょうど智が小学生になる時、跡目継続で須藤家が荒んでいたのを、父親が心配して母方に預けたのだった。

 今はやくざ廃業、だが、資金源は大してやくざの頃と変わっていない。

 法に触れることはしていないはずなのだが――と、智は信じたいが、そうそう人が簡単に変われるものでもないことを、彼は知っている。

 母は弱い人だった。

 夫の正体を知ることなく嫁いできて、その重圧に耐え切れなかった。

 先代までが作ってきた人脈は、父の代になっても受け継がれている。

 今、智に掴んだ情報を持ってきた人物も、そのひとり。

 専属の情報屋、世間的には探偵業をしている。

「じゃ、両親にこちらで調べてわかったことを流してくれ。生活の拠点を海外。定期的に居住を変えるって、どんな仕事をしているんだ?」

「ああ、旦那の方が絵描きみたいですね。息子がそっちの方で学生時代から稼いでこられたのは、血筋ってことですね」

「ちっ、芸術家ってやつか。益々気に入らないね」

「それと、田沢政幸が雇った探偵ですが、ここまではまだ突き止めていないみたいですよ」

「そう――で? やつはどうしている?」

「言われたように、右手を潰してやりましたから、二度と絵で稼ぐことはできないと思いますよ。まあ、左手で再出発といっても、数年はものにならないでしょう」

「これで、さつきの砕かれた夢の代償に見合うかな」

 そう言って須藤智は、少し悲しい顔をしていた。

 政幸から絵描きとしての職を奪えば、必然的に稼ぎがなくなる。

 まだ赤ん坊の子をふたり抱えて、弓子はどうしているのだろうと考えると、復讐をなしえてもスッキリとしない。

「奥さんの弓子ですが――知りたいですか?」

 須藤の目が、まっすぐ情報屋に向けられる。

「調べたのか?」

「そりゃ、旦那の方調べていれば、必然的に知ってしまいますよ」

「ああ、そうだな。聞こう」

「ええ……と、智さんがやっている系列の店にいますよ」

「――はい?」

 

-ラブストーリー


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