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ラブストーリー

Black Blood Christmas #8【再会のベル】

   

なぞのT氏の正体が明らかになる

さつきが仕組んだ復讐の罠は弓子を確実に追い込んでいく

しかしそれもつかの間のこと

智の言葉に自分を取り戻していくが、まだこれだけで終わるはずがない…

 

 翌年、須藤邸に新年の挨拶状と共に招待状が送られてきたのは、三が日を過ぎた頃だった。

 前の年に先代を亡くしている須藤家は密やかな正月を過ごしているが、智をはじめ弓子とその子供たちはまったく関係なく、年末も正月もいつもと変わらない日常を過ごしていた。

「差出人、さつきになっている。でも、文面からすると、英語教師としてここにいたさつきなのよね」

「僕は、そのさつきを知らない」

「タイミングよく消えたもの。余計怪しいけれど、証拠がない。だから、私は行くわよ」

「この招待? 美術鑑賞に興味あったとは、驚きだ」

「そういうあなただって、行くつもりでしょう?」

「まぁね。結局、T氏の正体がわからないし。直接乗り込むのも悪くない」

 去年突然来日した話題の画家、T氏は、マスコミに姿を見せることはなかった。

 代理人だというフランス人が対応しているが、日本語を一切話さない。

 T氏の言葉を代理人がフランス語で伝え、それを通訳が日本語に訳すという、とても変わった演出をしてくれていた。

 智と弓子が探している田沢政幸の行方も未だ掴めていない。

 T氏が田沢だと勘ぐるふたりだが、こちらも証拠がない。

 まして、記憶を失って右手を潰された男が、たった数年で復活してくるだろうか。

 考えれば考えるほど、出口が見えなくなっていた。

 

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