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ラブストーリー

Black Blood Christmas #10【紅弓子の想い】

   

紅弓子に戻って半年
弓子は全ての原点であると思う公園に来ていた

そこで今度は自分の身体を売る

ひとつの命を自分の意思で始末したとはいえ、やはりいいものではない

今になって子供たちへの母性が生まれてくる

子供に会いたい、その気持ちがさつきとの再会にもなった

 

 須藤智が姿を消して半年。

 季節は夏、去年の猛暑とは違い冷夏で過ごしやすかった。

 自分の私物以外、全てを残し賃貸の契約者名義を弓子に変更までしていってくれたおかげで、弓子はそう苦労することなく、少しずつ貯金をすることが出来た。

 自分たちの勝手で失わせた命の重さは、弓子にも圧し掛かってきていた。

 見捨てたふたりの子の行方、探さずにはいられなかった。

 今更母親面をするつもりはない。

 少しでもいい、養育費の負担を申し出たい。

 画家をしている田沢父の居場所は突き止められたけれど、居場所は海外。

 今の弓子にはどんなに頑張っても行くことのできない場所だった。

 同じく画家になっているはずの元々の夫の行方は相変わらずわからない。

 そして須藤智の行方も――

 そんな弓子は、ふとあの場所に行ってみようと思ったのだった。

 自分の進む道、踏み外した原点である、あの公園。

 あの時、行きずりの男を買ったりしなければ、産まれた子は田沢の子であったかもしれない。

 もっと、愛情深く育てられたかもしれない。

 田沢政幸――憎くて仕方のない男なのに、やはり人生の中で一番深く愛した男なのかもしれない。

 その男を見捨てた負い目、今になって少しずつ感じ始めていた。

 何もない女がひとりで生きていくのは大変だったのよ――そうやって、政幸の前で泣いて縋れば許されるかしら……そんな思いを浮かべながら、あの時と同じベンチに腰掛け、目の前の噴水を眺めていた。

 

-ラブストーリー


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