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ラブストーリー

Black Blood Christmas #12【さつき Re’surrection】

   

ひとりだけ幸せを掴むことなんて許さない

さつきの魔の手が弓子に迫る

失ったもの、取り戻せるものと取り戻せないものがある

だから許せない

許せない相手への復讐が静かに始まっていく

 

「私たちって、どうやっても引き寄せられる運命なのかしら?」

 さつきはとあるビルの一室で、そう口にした。

「好都合だとは言わないんですね。向こうから飛び込んで来ているのに」

「そういうあなたは、勝手に須藤智に手を差し伸べたじゃない? 良心?」

「どうでしょう。基本、嫌いじゃなかったですけれど、ただ恋愛には不器用な男だと思いますよ。なんだって、弓子と離婚なんて善人ぶったことをしたのか、私には理解できませんよ。自分を追い込んだ女ですよ? 地の果てまで追い詰めるでしょ、普通」

「執念という意味では、女の方がしつこいのよ、西岡さん」

「おかげで、稼がせてもらっていますから、いいんじゃないですか?」

 金に見合った仕事をする、そう裏で言われていた男にさつきが仕事を依頼したのは、記憶を取り戻してすぐだった。

 この男が須藤の情報屋で、弓子も密かに依頼していたことは、後で知る。

 三人が三人とも同じ内容の依頼をしていても、さつきに優位な情報を渡していたのは、単に金払いがよかったからに過ぎない。

 この男に、恩という言葉は意味がない。

「とにかく、私は彼が弓子絡みで何かをしたいと言えば協力しますよ」

「それで、カーセックス? 観客込みでなんて、趣味悪いわね」

「いやいや、それは結果論。選んだのは彼女ですから」

 要するに、母性に目覚めた弓子を上手く扱ったのだ。

「売れて?」

「それなりに。智に200万、弓子に100万、ほかもろもろに数百万でも、いい稼ぎになりました」

「あなた、組の再建でもする気?」

「どうでしょう。私の父は須藤の祖父に随分可愛がって頂きましたしね、私もその後を継いで須藤の父親にと思っていたのに」

 ようするに、今更カタギになれと言われても、そんな考えがなく育ってしまったこの男には、自分の居場所を奪ってしまった須藤の父親が憎かったのだ。

 その父親は呆気なく他界し、残った智は愛に不器用なくせしてその愛にしがみついている。

「別に、あなたが結果何を求めていようと構わないわ。私はただ、失ったモノは二度と戻らないということを、思い知らせてやりたいのよ。許せないわ、兄も弓子も智も。どうして、もとの鞘に収まろうとするの? 私は、戻したくても戻れないのに――」

 一度はもういいと思った感情が、また戻りかけていく。

 弓子が兄とよりを戻した。

 兄の中に自分の記憶だけがなく、弓子を愛していると口説いた。

 智は弓子を愛しているという自覚なく、かっこつけで去り、今も影ながら手助けをしている――が、西岡が横から手出しをしているから、そうそう上手く弓子にとって好都合には進まないと思うのだが……

「それで、どうするつもりです?」

「弓子、妊娠したわよね、兄の子。始末させるわ」

「わかりました。二度と子が産めない身体になってもらいましょう。一門病院の院長とは父の代からの長い付き合いです。金でこちらの要求、受け入れてくれるでしょう。なんでしたら、田沢の記憶もなんとかしますか?」

「新たに記憶を植えつける。そんなところかしら?」

「そうですね。あなたにしたこと全てを、上に被せるように。ふたつの愛に揺れてもらえれば、また――」

 それに関しては任せるとだけ言い、さつきは部屋を出た。

 

-ラブストーリー


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