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ラブストーリー

ふり返れば、愛慾。3【年下の男】

   

年下の男は自分を飾らなくていいから気がラク

ラクな分、少しだけ物足りなさがある

だからかな、つい比べてしまうのは

比べるだけで、年下の彼に何かを求めるわけじゃないけれど

 

「お帰りなさい、彩香さん」

 二日振りに帰宅をすると、出迎えてくれたのは意外な人だった。

「透(とおる)くん、来ていたの? ってことは、圭吾(けいご)いるんだ。珍しい、こんな時間に」

 こんな時間、陽も暮れだした時間。

 普段なら仕事しているはずの、弟、圭吾がいるのは珍しい。

「いいえ、いませんよ。留守番、頼まれちゃって」

「留守番? いやだ、あいつ。何やってんのよ。ごめんね、透くん。断っていいのよ?」

「別に嫌じゃないですし。こうして彩香さん出向かえられるなんて滅多に出来ない経験ですから」

 ニコッと笑う彼の笑顔に、私は言おうとした言葉を飲み込んでしまった。

 彼との出会いは三年前。

 私がモデルから役者への転向を考えていた頃。

 彼もまた自分の人生に悩んでいた頃だったわね。

「ホント、ごめんね。お詫びと言ったらなんだけど、夕飯食べていく?」

 こうして夕飯に誘うのも決して珍しいことじゃない。

 だから当然、彼もこう答える。

「ラッキー。彩香さんの手料理。ちょっと下心あって引き受けた甲斐がありました」

 また笑う。

 透はホント、よく笑う。

 この笑顔に私は何度救われたことか。

 飾らなくていい、本当の岸谷彩香でいられるって、凄く心が落ち着く。

 良高とは違う安らぎと安心感が得られる。

「そう言ってくれると作り甲斐があるわね。待ってて、着替えてくる」

 そう言って、玄関から二階の自分の部屋に行こうとした時、力強い腕に抱きしめられてしまったの。

 気取らない、男の香りがする透に。

 

-ラブストーリー


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