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SF・ファンタジー・ホラー

よろず代行株式会社(後編・1)

   

藤田は、受験を替え玉に任せ、ホソカワの言われるがままに、奇妙な仕事に従事していた。そして、合格発表の日が訪れ、藤田は見事大学に「受かった」。だが、鈴木の主催する祝賀会にすら、藤田に代わり、替え玉が出席していた。

激しく憤る藤田だったが、ホソカワに重い現実を突き付けられ、会話の主導権を握られてしまう。さらに、話の中でホソカワは、鈴木を危険な存在だと断じたのだった。

反射的に否定した藤田に突き付けられた「証拠」とは……?

 

 藤田は、喫茶店でコーヒーを飲んでいた。明らかに、普段飲んでいるものとは違う、高級な豆を使ったものなのだろうが、味は良く分からない。いや、分かる必要もない。無線機で入ってくる指示通りにこの店でコーヒーを飲むこと、それが、百万円という大金がかかった「仕事」の条件なのだ。
「『こっちの事情』は済んだッス。もう店を出られて結構ですよ。後日金は振り込みますんで、ウチの事務所で『代行』の仕事に入って下さい」
 無線機からホソカワの声が聞こえてくる。至って軽い調子だが油断はできない。
 もし、指示に従わなかったりためらったりしたら、すぐさまドスの効かせた声を見舞ってくるだろう。
 藤田は、口の中のコーヒーを飲み下し、声を発した。
「了解。でもよ、もう受験の二日前だってのに、街をうろついたり、バイトしてたりしていいのか? 『俺』が受験するんだから、勉強するフリをしておいた方が……」
「心配要らないッス。いくら会場でのチェックが厳しいとは言え、受験者個人の調査まではしていませんからね。それに、社会人受験をするんですから、高校生のように勉強だけしているような形は不自然ですよ。ばれないようにするためには、自然でなければいけません」
 断言され、藤田は納得した。
 仮に納得していなくても、これ以上話を引っ張りたくはなかった。
 連中は既に、「本物の藤田 順也」を手に入れている。
 邪魔になったからという理由で藤田を消しても、不都合は全くない立場なのだ。
(くそっ、マジで厄介だ。どうしてこんなことに……)
 盗聴されている不安から、藤田は声を出さず、心の中だけでぼやいた。

 

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