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SF・ファンタジー・ホラー

よろず代行株式会社(後編・2 完)

   

「適切な」行為を選択した藤田が、ホソカワから与えられた任務は、至って簡単なものだった。しかし、藤田のその行動は、長い時間を経過していく中で、確実に鈴木の精神に響いていく。

そして、鈴木が藤田に殴りかかるほどに、険悪な精神状態になったことを見て取ったホソカワは、最後の「仕掛け」を行うのだった。

 

「仕掛ける」と言われたものの、藤田の日常に大きな変化は無かった。
 変わったことと言えば、事務所での作業量が若干増えて、書類の中に、数字の羅列や票の類が多くなったことぐらいだろうか。
 鈴木との接点はあまりない。
 元々、仕事が忙しいため、鈴木が大学に顔を出すことは滅多にないし、藤田は、講義も替え玉に任せているので、基本的に、大学に用はないのだ。
 ただ一つ、ホソカワから指示があった。それは、
「たまに学校に行った上で、鈴木さんに対して、できるだけ素っ気ない態度を取って下さい」
 というものだった。
 藤田としては、都合の良い指令だった。
「裏」の顔を目で見てしまってから、鈴木と会う気はすっかり失せていた。
 藤田の中では、鈴木は依然として友人だったが、本性を見たくはないというのが正直なところだった。
「よう、しっかり勉強やってるか」
 ホソカワの指示通り学校に行ってみると、鈴木とばったり会った。
 どうやら、「よろず代行」の方では、鈴木の動向を完全に把握しているらしい。
「ま、まあな。ああ、俺は忙しいから、これで……」
 藤田は、演技と言うより、ほとんど本心で、鈴木から離れた。
 鈴木はそんな藤田の態度に、不快気な表情を見せたが、何も言わずに帰っていった。
 すると、すかさずホソカワから電話が入る。
「いいですね。完璧でした。こんな感じで行きましょう。って言うか、鈴木さんが来る時は、藤田さんも学校に行って『遭遇』して下さい」
 ホソカワのきっぱりとした口調に、藤田は僅かな疑問を感じた。
「いや、それはいいんだけどよ。会うだけだったら、替え玉でいいんじゃねえか?」
「ダメだね。彼はあんたの事をとても良く知ってる。見ず知らずの試験官を騙すようなワケにはいかねえ。いいかい、この計画は簡単だけどな、それでも鈴木が、『雰囲気』だとか『感じ』を疑うようなことになったら面倒なんだ」
 ホソカワの有無を言わさぬ口調に、藤田はそれ以上反論するのを避けた。
 実際のところ、鈴木には会いたくないという感情が大きいのだが、ホソカワにすごまれては、嫌とは言えなくなってしまうのだった。

 

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