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マスクエリア 第五覆面特区 最終章 流星の輝き(10)

   

当初の予想とは裏腹に、榊原は、格闘家では考えられない特殊能力を駆使して、次々とポイントを奪っていく。

一方、新月は、榊原に苦戦する佳代を見ながら、ルールに感謝すると同時に、かつての出来事を思い出すのだった。

 

「ヒット! 一ポイント、カジモト!」
 審判のコールに佳代は動きを止めた。
 止められていなければ、全力で回し蹴りを叩きこめていたところだ。
 納得のいかない表情で、一歩退き、構えを取る。
(むむ、佳代様が構えを。よりにもよって、こんな時に見ることになるとは……)
 新月は、リングサイドにのしかかるようにしながら、遠い昔の出来事を思い出していた。

あれは、とても暑い日のことだった。

「……くくっ、申し訳ありません、佳代様。何のお役にも立てず」
 新月は、ぜいぜいと荒い息をつきながら、ようやくのことで、緑化サハラの地面から、片膝を浮かせて立ち上がった。
 強烈な使命感と全身を駆け巡る敗北感がなければ、他の親衛隊員と同様に、気絶したままだったはずだ。
「気にすることはないよ、新月。閣下を逃がすこともできたし、こっちより相手の力が上だったってことだけよ。そして、私たちは、格上の敵と戦う想定をしていなかった」
 佳代は、木にもたれかかりながら、冷静に語った。佳代自身の体から出た血液が、佳代の衣服を赤黒く染めている。新月は顔を歪め、唇を噛んだ。
(全くです。普段は黒鳥会総帥を務めているという黒田氏。裏社会の住人に過ぎないはずの彼が、まさかこれほど圧倒的な力を有しているとは)
 新月は、地面に落ちていたナイフを拾った。
 薄い、小さなナイフで、手裏剣というよりは針に近い形をしている。
 よほど急所に深く刺されなければ、致命傷には至らないだろう。しかし、「閣下」に特別に選ばれた親衛隊たちは、皆、このナイフを受けて地面に倒れ伏してしまったのだ。
「屈辱ですね。落命する方がまだ良かったかも知れません」
 親衛隊員は、誰一人として死んではいなかった。
 意識を失うポイントにナイフを投げつけられ、眠っているだけだ。
 数時間もすれば、目を覚ますだろう。

 

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