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ラブストーリー

ふり返れば、愛慾。11【捨てられる男】

   

私の前に現れた女性のひと言ひと言に私の気持ちは揺れ動く

女として
モデルとして

そして私はある決心をする

 

 実際、私は泣いたり悩んだりしている暇はなかったの。

 会見の翌日はオフだったけれど、その翌日からは連日雑誌のインタビューに店頭キャンペーンにと一日に複数の仕事をこなし、何年かぶりに現場マネージャーまでつけてもらえて、移動は車でラクだったんだけれど……

 あの日、良高に置き去りにされた日以来、彼と連絡取り合っていないし。

 その不安だけはどうしても拭えなかったわ。

 そんな時だったの。

 珍しく彼からのメール。

 メールで連絡なんて、本当に珍しい。

 しかも、会いたいなんて……

「ねえ、今日の予定で、私が自由になれる時間って、あります?」

 運転をしているマネージャーに問いかけてみると、即答ないとのこと。

 そりゃ、そうよね。

 昨日も一昨日も、そのまた前の日も……ずっと誰かと一緒でひとりになれる時間なんてなかったし。

 なれた時って、家まで送ってもらった後だもの。

 仕方がないので、仕事が終わらないと無理とメールを返す。

 するとものの数秒でまたメール。

 本当に珍しい。

 こういうやりとりするくらいなら、電話の方が早いのに――

 仕事終わってからでもいいから、会いたい。

 例のホテルのあの部屋で待っている。

 良高が待っている。

 待っていてくれている。

 私の気持ちが高ぶっていくのがわかったわ。

 少しでも早く会いたい。

 あの時、置き去りにしていたことは何かの間違い。

 きっと、また僕のアヤカと言ってくれる。

 私を抱いてくれる――そう思うと仕事への意欲がましていくの。

 男の存在、威力って凄い。

 予定より若干早く仕事を終えた私は自宅まで送ってもらい、そのまま車が視界から消えるまで見送った後、タクシーを呼んでホテルへと向かったの。

 彼の待っている部屋の前で深呼吸。

 ノックをして、中から鍵が開く音がして。

 でも扉を開けてくれないことに疑問抱きつつ、私は自分の手でドアノブを回した。

 

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