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SF・ファンタジー・ホラー

マスクエリア 第五覆面特区 最終章 流星の輝き(16)

   

最終戦を目前に控え、選手たちの心と体はさらに動いていく。高倉は、自らの実力の秘密を清水に語った。一方サラは、笹田を打倒した佳代への恨みに突き動かされていた。

そして、ついに「裏切り者」がその正体を明らかにする……

 

 香西と榊原が出ていったことで、控室には、清水と高倉が残るだけとなっていた。
 高倉は目を閉じて、ゆっくりとシャドーを行っている。
 視覚を遮断しているのは、敵をイメージしているからかも知れない。
 僅かな息遣いと、拳が空気を切り裂く音だけが、広い室内に鳴り響いていた。
(騒がしくないってのが、少し、嫌だな……)
 清水は、自分の心音を感じていた。筋肉が強張っているのが分かる。
 皆と喋っている時はそうでもないのだが、話すことを止めてしまうと、ひとりでに思考が始まってしまう。
 殺気立った観客の視線、レフェリーの懇願するような表情が、頭の中をよぎる。
 どこかじわりと重たかったリング内の雰囲気の記憶が、清水の全身にこびりついていく。
 そう、今日やっている試合は、普段とは比べものにならないほど重要だ。
 特区の未来が、清水たちの双肩にかかっているのである。
 この決戦で勝利できれば、特区からマクベスの影響力を排除することもできるだろう。
 だが、もし敗北すれば、全ての特区が、現在、マクベス側に支配されている第五覆面特区のように、管理され、息苦しい空間になってしまうだろう。
 清水にとって、それは絶対に想像したくない未来だった。
「そんなに肩に力を入れるなよ。力みはいい結果を生まないものだ」
 清水の緊張を察知したかのように、高倉が声を発した。
 緩やかに流れるシャドーの動きは止めず、床を滑りながら様々な技を出している。
 動きながら攻撃を繰り出していると言うのに、高倉の体のどこにも力みは見えず、全く音も立たない。
 清水は、自分が緊張していたことも忘れ、高倉の見事な動きに見入っていた。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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