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ラブストーリー

LOTUS extra 〜The Happy Princess〜 <中>

   

「なあ、みっちゃん」
「なあに、お兄ちゃん」
「あの家にみっちゃんの宝石を置いてきたら、兄ちゃん、なんか胸のあたりがぽかぽかしてきた」

LOTUS』 ―稔×瑞穂―
≪「LOTUS」 番外編≫

Illustration:まめゆか

 

 ツバメさん。
 あたしの「お兄ちゃん」になってくれた、小さなツバメさん。
 あのね……あたし、あなたにとっても大事なお願いがあるの。

「なあ、みっちゃん」
「なあに、お兄ちゃん」
 この呼びかけ合いを、一体、何度繰り返したことでしょう。
 小さなツバメから「みっちゃん」と呼ばれるたびに、そしてその小さなツバメに「お兄ちゃん」と呼びかけるたびに、王女の心の片隅に残っていた、要らないものとして置き去りにされた哀しみが、少しずつ薄らいでいくようでした。
「あのさぁ、みっちゃん」
「なあに?」
「実はさぁ、兄ちゃんさぁ、これからエジプトに行かなくちゃいけないんだ。先に行ったみんなを追っかけて、でっかいピラミッドのあるところまで飛んで行かなくちゃいけないんだよぅ」
「そうね」
 王女は言いました。
「ほかのツバメさんたちは、もうずいぶん前に国境を越えて行ったわ。お兄ちゃんたちツバメさんは暖かいところが好きだから、この国では冬を越せないんでしょう? 最近、街の人たちが『寒くなりましたね』って言っているもの。お兄ちゃんも、急がなくっちゃ」
「うん。なあ、みっちゃんも一緒に、エジプトに行こうぜっ」
「あたしも?」
 思いもよらぬ誘いに、王女はまたもや苦笑を浮かべました。
「そうね、あたしもお兄ちゃんと一緒に行けたらいいんだけど……でも、だめなの。あたしの足は、この台座にしっかりくっつけれられているんだもの」
「取れねぇの?」
「取れないわ」
「そっかぁ」
 ツバメは残念そうに王女の肩から飛び降りると、パタパタと羽ばたきながら王女の手に移り、美しい月明かりに照らし出された王女の顔を見上げました。
「一緒に旅ができなくて残念だけど、お兄ちゃん、春になったら、またこの街に来てくれるんでしょう? あたし、楽しみに待ってるから、春になったらエジプトのお土産話をたくさん聞かせてね」
「もっちろん! でもさぁ、やっぱ残念だなぁ。エジプトって暑いくらいあったかくてさぁ、こーんなでっかいピラミッドがいくつもあって、川のほとりにはきれいな花がいっぱい咲いてて、すっげぇいいところなんだ。みっちゃんと一緒に行けたら良かったのに」
「そうね。さあ、お月さまがあんなに高くなったわ。お兄ちゃんはそろそろ寝なくっちゃ」
「うん。なあ、みっちゃん、兄ちゃん、今夜はみっちゃんの手で寝てもいいかなぁ。ぴっかぴかの金のベッド!」
「ええ、どうぞ。寝心地がいいかどうかは、わからないけど」
 ツバメは美しい翼を広げると、せっせと羽繕いをして、寝支度に取り掛かりました。王女と一緒に旅ができないのは残念でしたが、この円柱から動けないと言うのなら、仕方がありません。
「そうだ!」
 そのときです。
 小さなツバメの小さな頭に、とてもいい考えが思い浮かびました。ツバメはぱっと顔を上げると、自分を優しく見つめている王女に、こう言いました。

 

-ラブストーリー

LOTUS extra 〜The Happy Princess〜<全3話> 第1話第2話第3話

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