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マスクエリア 第五覆面特区 最終章 流星の輝き(18)

   

本性をあらわした「香西流」。健康法の建前とは程遠い、容易に命すら奪い得る破壊力に、新月は、翻弄されていく。

だが、新月は負けられない。今負けたら、佳代が再び香西に傷つけられるかも知れない。だから、絶対に負けられないのだ。

そして、極限状態の中で、新月は、意識を「溶かす」ことに成功した……

 

 これが、香西流なのか……
 新月は、奇妙な構えを見せる香西に、相対する形で拳を上げた。会場の歓声は収まり、代わりに、囁きともざわめきともつかない声が、あちこちから聞こえてくる。
 皆、噂の香西流が実戦投入されるという現実に、目を凝らしているのだ。

 香西流は、香西が独自に開発した。
 何も、特別な事をやるわけではない。
 だが、技の「配分」があまりにも異質だった。
 突きや蹴りで瓦や板などを割る、「試し割り」と言う技がある。拳の鍛錬具合や技の切れなどをチェックしたり、パフォーマンスの一環として用いられることも多い、ごくありふれた練習方法だ。しかし、香西は、訓練のほとんど全てを、試し割りに費やすという独自の流派をスタートさせたのだ。
 実戦経験の豊富な香西の取った選択に、同業の人間は衝撃を受けた。
 拳を鍛え、一撃の強さを高めることに主眼を置いた流派もあるが、そうした流派と比べても、香西流は、剣術と試し切りほどに離れている。
 事実、香西流は、武道ではなく、格闘技の動きを活かした健康法や瞑想法の一種として普及されていった。
 拳を物理的に鍛えて、標的を破壊する。
 または、気功の力で拳を硬くする。
 あるいは、様々なトリックによって板やビール瓶を割っていくというのが、香西流のカリキュラムだった。
 生徒は、概ね三つの選択肢のうち一つを選ぶか、複合させる形で、拳を練り、成果を見せつけていった。
 空手などとは違い、試し割りにのみ集中しているため、素早く効率的に標的を破壊できるようになる上、気功のカリキュラムが、リラクゼーションの効果があるということで、闘争から離れている本土などで、広く普及していったのだ。
 学ぶ人間が増えるにつれ、一つの噂が囁かれるようになった。「香西流は、強い。それも、普通じゃないほど強い」というものだ。
 格闘技ですらない香西流が、そんな噂の対象になることは意外だったが、学ぶ人間が多くなればなるほど、噂は信ぴょう性を強めていった。
 創始者の香西が現役の格闘家だったことも大きいだろう。
 今日は、そんな香西流の、実戦デビューの日である。多くの人が知っている健康法の、裏の顔が一体どんなものか、皆が関心を持っている。
 香西がどう動くか、注目しているのだ。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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