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マスクエリア 第五覆面特区 最終章 流星の輝き(19)

   

ついに、高倉とアランの試合が始まった。

リング上で間合いを取り、牽制し合う二人の見えない攻防は、清水にすら理解できないレベルに達していた。だが、二人の試合にかける思いは、観客に伝わり、会場はヒートアップしていく。

そして、間合いを削り合った高倉とアランは、激しい打撃戦に突入していくのだった……

 

 高倉の背中には、力みも気負いも無かった。
 特区の未来を決する戦いに臨もうというのに、表情にも険しさは無い。驚くほど、柔らかく、緩い空気が全身を包んでいる。
「お、おい、高倉さん。大丈夫か。気合いが入ってねえようにも見えるんだけどよ」
 清水は、焦れて口を開いた。
 リングに上ろうというこの時に話しかけるなんて、常識ではあり得ないのだが、それでも話を振らなければならないほどに、余裕を無くしていた。
 何万人もの観客一人一人が、自分がこれから決闘に臨むというほどの殺気を放っている。
 その迫力に、清水は気圧されていた。
「香西があれだけの事をしてくれたんだ。後は、俺が、見せるだけだ。全てを。あるいは、見せたいのかな」
 それだけ言うと、高倉はリングに上がった。
 ほぼ同じタイミングで、アランもリングに上がる。
 上半身裸になったアランの肉体は、巨漢ということもあり、かなり迫力がある。
 しかも引きしまっていて、しなやかだ。
 筋肉を見ただけで、一流のファイターだと分かる。
 高倉もまた、上半身裸だった。
 黒のレスリングパンツ。ストロングスタイルを象徴する「形」をまとっている。
 アランよりも頭半個分大きい肉体と、一周りはごつい骨格を下地に、全身のあらゆる部分に、筋肉が詰め込まれている。
 特に、胸から腹にかけてのラインは、四角形ですらなく、正三角形に近い。
 しかも、そのシルエットを構成しているのは、全て筋肉なのだ。
「すげえ……」
 清水は、二人の姿に、感嘆の声を漏らしていた。
 しかも、アランも高倉も、無駄な緊張は一切していない。
 立ち姿、歩く姿で、その事が容易に分かる。怒号と歓声が渦巻く会場で、リングの中だけに、全く別の、静かな雰囲気が立ちこめていた。
 ニュートラルコーナーからアランと高倉が前に進み出ると、レフェリーはリング中央から大きく飛び退き、慌てて試合開始を告げた。
「ファ、ファイトっ!」

 

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