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SF・ファンタジー・ホラー

マスクエリア 第五覆面特区 最終章 流星の輝き(20)

   

アランと高倉の激闘は、打撃戦から組み合い、関節技の取り合いへと変化していった。その中で、心底高倉の実力を認めたアランは、自分の中に存在するいくつもの身体機能の「引き出し」の中身を明らかにしていくのだった……

 

「ぬうう、重い……!」
 打ち下ろされた高倉の両掌に、アランもまた両掌を合わせた。
 腕から腹に至る体幹部までの部分に、物凄い重量が加わる。
 高倉の体重ではなく掌の威力が、アランの肉体を軋ませていた。アランが組んだ手を伸ばすと、きれいな「手四つ」の形になった。
 クラシカルで正統派のプロレススタイルに、場内から拍手が巻き起こる。
 高倉が、上体を被せるようにして、アランとの距離を詰めてきた。
 のしかかられるような状態になったアランは、必然、膝を曲げ、背中をのけぞらせて、高倉との距離を保とうと試みる。
 しかし、その前に、高倉がさらに体を近づけてきた。
 小さく声を漏らしながら、アランはぐっと背中を逸らした。
 膝を曲げ、背中を曲げていくと、頭頂部がマットに、どん、と、ぶつかった。
(上手いな。それなら)
 巨漢二人分の負荷が首に集中する前に、アランは両脚をマットから離し、首だけで逆立ちの体勢を取った。
 そして、そのまま両脚を開き、高速回転させる。
 高倉の分厚い胸板に、二発、蹴りが入る。乾いた音がリングに響いた。
「ふしゅっ!」
 アランの動きは止まらなかった。
 アランの狙いは、胸板ではない。
 肘だ。
 高倉の肘関節を、下から蹴り上げようと、脚を折りたたみ、輪を小さくして、再び回転を始める。
 と、高倉が手を離した。アランは、浮き立つような気分を味わいながら、両手をマットに付け、腕の力だけで飛び上がる。
 とっ、と、アランの巨体が空中で反転し、脚から着地したところで、観客からのため息が響いた。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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