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SF・ファンタジー・ホラー

マスクエリア 第五覆面特区 最終章 流星の輝き(21)

   

ついに、「素」の姿を見せたアランと、高倉の激闘はさらに続く。だが、「抜き手」で負傷した影響で、高倉は徐々に押されていった。

マットに自らの血を滴らせながらも、健闘する高倉。しかし、そんな高倉をアランの「奥の手」が襲うのだった……

 

「な、何だ、ありゃあ……」
 清水は、驚きの声を上げていた。
 場内の観客たちも、同様にどよめいている。
 皆の視線の先には、アランの姿があった。
 息を吸って吐いたことで、より精神が集中しているように見える。
 だが、清水たちが問題にしている部分は、内面ではなく、外見にあった。
 傷。
 大小無数の傷が、アランの全身、首からつま先まで、くまなく浮き上がってきたのだ。
 大きな傷は、数十センチ以上に及んでおり、異様なほどの盛り上がりを見せている。
「内臓までえぐられて、完璧に回復しねえと、あそこまで出て来ねえぞ、きっと」
 清水の言葉に、香西も頷いた。
 ボクシングという競技を長く続ける過程で、清水は傷の専門家のような知識を身に付けていた。
 傷跡というのは、基本的に、人間の回復能力が働いた結果だ。
 大きな外傷に、回復力が過剰に働いて、傷跡として組織が盛り上がってきたりするのだ。
 つまり、傷跡は修復の証だとも言える。
 アランの体幹部に付いているいくつもの傷は、異常に大きく、広く盛り上がっていた。
 つまり、常識では考えられない修復能力を発揮しない限り、どうにもならないような負傷に何度も見舞われ、完全回復してきた証明である。
 そして、大小無数の傷跡のそばには、ただの一つも、針の穴で皮膚に穴を開けた縫合跡は無かった。
 内臓までごっそりえぐられるような傷を、縫合すらせずに治しきったと言うことになるのか。
 だとすれば、アランの耐久力は、人間の限界をあまりにも超え過ぎている。
 一瞬、驚いたような表情を浮かべた高倉だったが、すぐに薄く笑って、すっと前に進み出ていった。
 対するアランは、両腕で頭部全体をガードして、前進していく。二人の足取りは直線的で、様子を見ようとする意図は、もはや感じられない。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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