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ラブストーリー

きみが困らなければいいけれど。 前編

   

莉子と穗積の物語。
【…MARK】などの続編。

3日ぶりの逢瀬は、クリスマスイヴ。
莉子は、穗積へのクリスマスプレゼントとともに、
もうひとつ、秘密を抱え、
遅れてやってくる、穗積を待っていた。

 

 寒い、冬の夜。
 夜の帳のおりた、街。
 それでもどこか、こころ踊るのは、街を彩る、イルミネーションのせいだろうか?
 クリスマスという、恋人たちにとっては、年末最大のイベント。
 待ち合わせは、いつものシアトル系カフェ。
 4人掛けのテーブルの、莉子の隣の椅子には、待ち人である、穗積へのプレゼント。
 莉子は、プレゼントの入った、ペパーバッグをみつめ、にこり、とくちびるをかたどり、その視線を、自身の下腹部へと向けた。
(穗積は……)
 どう、思うだろう。
 目の前に、差し出される、現実を。
 クリスマスソングと、クリスマスカラーに、埋め尽くされた、この日にされるとは、思いもしないだろう、現実を。
(なんて、言うん、だろ……)
 莉子が与える現実に対する、穗積の反応を想像して、莉子の胸は、不安に、押し潰されそうになる。
 受け入れて、くれるだろうか? それとも、拒絶される、だろうか?
 それとも、何も言ってはくれず、なかったことにするかのように、いつもと変わらない夜が、始まるのだろうか。
 穗積にとって、クリスマスなどというイベントは、あまり興味のあるものでは、ないようだから。
 もたらされた現実を、直視することを拒むように、莉子の肩を抱き、歩き出すかもしれない。
(でも……)
 そんなことは、絶対にない、と信じたい。
 穗積に限って、現実を無視するようなことは。
 たとえ、拒絶されることが、あったとしても。
 そう、莉子は願って、店の入り口へと視線を移し、そこに見つけた穗積の姿に、ほっと息を吐いた。
 莉子は、いつものように、遅れてやってきた穗積を、見つけて立ち上がり、ちいさく手を振って。
 穗積も莉子を認めて、小さくうなずいて。

 

-ラブストーリー

きみが困らなければいいけれど。<全2話> 第1話第2話

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