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ラブストーリー

きみが困らなければいいけれど。 後編

   

莉子と穗積の物語。
【…MARK】などの続編。

その告白は、穗積を混乱させ、莉子をも混乱させて。
寒さなどはねのけるはずの、クリスマスイヴ。
なのに、ふたりの間にあるのは、恋人の暖かさではなくて。
けれど、それは、もっと……、しあわせなことば。
お決まりのことばでは、なかったけれど。
それは、未来を約束することばだった。

 

「……堕胎(おろ)すとか、そんな簡単に、言うな……!」
「でも……っ! 穗積はいやなんでしょ!? あたしが妊娠したの……!!」
「……だれもそんなこと、言ってねぇだろ!?」
 ふたたび、揺れていただけの、莉子の瞳が、歪んで。
 いったん、止まったかに見えた、悲しみの涙があふれ出す。
「……あたしだって、ほんとは、産みたい。だって、穗積の赤ちゃんだもん。堕胎すなんて、できないよ」
 ならばなぜ、そんなことを言うのだろうか?
 穗積が、心ないことを言ったとしても、反対したとしても、堕胎するなどと、言わなければいいのだ。
 そう言わせてしまったのは、穗積のなにげなく発した、ひとことだったけれど。
 それは、莉子だけの、責任ではないのだから。
 ふたりで、結論を出すことなのだ。
 曖昧な態度を見せた穗積を、なじることもできるだろうに。
 莉子は、そうすることはなくて。
 穗積にとっては、さして意味のない、クリスマスだとかいった、イベントごとに、命を懸けているかのような、莉子。
 だからこそ、穗積もそんな莉子のために、ひと月以上前から、莉子へのプレゼントをリサーチし、準備したというのに。
 莉子に、幸せな思いをさせてやるために。
 なのに、うまくいかない。
「だって、ひとりで産むって言ったら、もう穗積と一緒に、いられないじゃない……!」
「……」
 目眩がした。
 悲しげに、それでいて、確固とした、意志を見せる莉子に。
「でも、ほんとは、そんなことしたくない。この子はせっかくあたしのところに、来てくれたんだから。それでも……!」

 

-ラブストーリー

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