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SF・ファンタジー・ホラー

王子は背中に花しょって*その四*

   

『Actually, I can not wait a second.
You would think the same, Roki?
(本当は僕は一秒だって待っていたくないんだ。
お前だって同じだろ、狼牙?)』

冷たい風が吹き、その獅羽の悲しげなハスキーボイスが揺れる。

私の胸が痛み始める。

二人は何を思い出させたいの?

私の中の〈何か〉も思い出せと言い続ける。

『This cannot be helped too impatient.
(あせっても、仕方のないことだ。)』

狼牙はため息をついた。

狼牙は私の顔を両手で包み込み、優しく上に向かせた。

舞台はアメリカ・ニューヨークからイギリス・インヴァネスへと移ります。

皆様のお言葉お待ちしています(^ ^)/
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イギリスの空は暗い…。

でも、その暗さが何故か古城にはぴったりマッチする。

目の前のネス湖のほとりに佇むアーカート城。
城主の居ない城は淋しげに朽ち果てている。

私の手を優しく包み込む、暖かな大きな手。

横を見上げると、

獅羽が少し厚めの唇からフッフッと息を吹いている。

薄茶の長い前髪がフワッと浮き上がり、その度に翡翠色の瞳が見え隠れする。

退屈なのかしら…。

肩口まであった髪を、耳朶が見える位まで切った獅羽。

今まであまり見えなかった翡翠のピアスが、耳でその存在を主張する。

いい男だなぁ…。

軽くウェーブがかかった新しい髪型は、獅羽によく似合っている。

私の視線に気付いた獅羽は目を細めて、

『お茶しない?』

とハスキーボイスで訊いた。

『いいけど、何処で?』

獅羽は下に置いていたピクニックバスケットを右手に持った。

『あっち。』

と、獅羽は私の手を引き、寒空の中歩き出した。

寒くても青々とした芝生が続く、小高い丘。

チラホラ観光客が居るが、誰もこんな寒い日にピクニックなんかしない。

私達は好奇の目で見られながら、少し大きめのブランケットを芝生に置いた。

獅羽がお茶の用意をしている。

バスケットを開け、お皿とフォーク、ティーポットにティーカップ。
それに、2段のティースタンド。

朝から狼牙が焼いてくれたらしいスコーンとキュウリのサンドイッチ。 

クロテッドクリームとジャムの瓶に紅茶壺。 

ミネラルウォーターを入れた魔法瓶。

小さなガススタンド。

それに見合うヤカンが1つ。

どうやら、本格的なアフタヌーンティーをしてくれるらしい。

『蒼音、ティースタンドを組み立てて、お菓子載せて。』

私は言われるがまま、簡易型のティースタンドを組立、そこにスコーンとサンドイッチを置いた。

『やっぱり紅茶は新鮮な水を沸かして、熱湯で淹れなきゃね。
蒼音、知ってる? 紅茶には硬水と軟水、どちらが適してるか。』

と獅羽はヤカンに水を入れ、ガススタンドにかけた。

んー、昔、何かの本で読んだ…。

『え~っとね、確か硬水だよね。』

と私が言うと、獅羽は口角をグッと上げ、胸の前で大きなばってんを作った。

『ブブーッ。はずれ~。』

『じゃぁ、軟水?』

と私が言い直すと、今度は頭の上にバッテンを作った。

『残念でしたぁ。
茶葉によってどの水も適しているんでぇす♪』

私はちょっとムッとした。

『そんなの引っかけ問題じゃない。』

膨れる私を見ながら、子供みたいに得意げな顔をする獅羽…。

あの〈獅羽〉とは、全く別人だ。

『でも、今日はイギリスだから、やっぱり硬水だけどね。』

獅羽は沸騰したお湯をティーポットに注いだ。

『獅羽、葉をまだ入れてないよ。』

『ティーポットを一回温めるんだよ。』

そう言って、獅羽はティーポットのお湯を捨てる。

獅羽は慣れた手つきで、紅茶を作っていく。

『蒼音はミルク入れるんでしょ。』

頷くと、獅羽はティーカップにミルクを入れ、紅茶を淹れた。

少し、いや、かなり寒かったけど、私はほっこりした気分で、アフタヌーンティーを楽しむ。

獅羽も、あの天使の笑顔を浮かべている。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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