幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

未分類

GunDaddy&GunDaughter~ガンダディ&ガンドーター~第9話

   

殺し屋レディ・タランチュラことセラリア。彼女はある目的があって斗紀桜府を訪れていた。
一つは麻薬イエロードロップのこと。そしてもう一つは、ある男を捜すことであった……。

 

 夜の路地裏で、男は顎に拳銃を突き付けられて情けない悲鳴を上げる。拳銃……ワルサーP99を突き付けているのは、金髪の美女セラリア。
「何だよ……あんた、イエロードロップが欲しいんじゃなかったのかよ!? あ、あんた警察か!?」
「日本の警察は、こんな拳銃持たないわよ。イエロードロップはもらうわよ……いいえ、この言い方は間違いね。返してもらう、が正解だわ。あれは元々私たちの組織のものだしね」
 言いながらセラリアは、P99の銃口をさらにグイッと男の顎に押し付ける。
「さ、持っているイエロードロップを全部出しなさい。私としては、死体にしてから奪ってもいいのよ?」
「わ、分かった! 出す……出すよ!」
 男は急いでジーパンのポケット、ジャケットのポケットから黄色い粒を包んだ紙を取り出してセラリアに差し出した。
「素直はいいことよ。じゃあ、次は質問。これ、どこで仕入れたの? この質問にも、素直に答えてくれると嬉しいんだけど?」
 セラリアのトリガーにかかった人指し指がクイクイと動く。言わないと問答無用で撃つという態度。彼女にとって人殺しなど、喉が渇いたら水を飲むのと同じような感覚だ。
 何も感じることなく、人を殺すことができる。
 男は三下かもしれないが、それでも闇で非合法品を売る人間。セラリアは平気で人を殺せると、感じ取ることはできた。
「言う! 言うから!」
「素直でよろしい」
 男の素直な態度に、セラリアは真紅のルージュを塗った肉感的な唇に笑みを浮かべた。

 雑居ビルの一室、そこのドアがスパスパと何かで切断された。細切れにされたドアの切断面は、レーザーで斬られたかのように滑らかである。
 金属のドアを細切れにしたのはセラリア。何かキラキラと光るものがジャケットの袖の中にスルスルと収まっていく。
 ワルサーP99をホルスターから抜き、セラリアは部屋の中に入り込む。真っ暗な部屋……人の気配はない。藻抜けの殻。セラリアは小さく舌打ちする。
「一歩遅かったみたいね」
 暗い部屋の中を見回す。光源は窓から射し込む街灯の光のみ。訓練で鍛えられたセラリアの目には、それだけで充分な光量であった。室内はよく見える。
 つい十数分前まで人がいた気配。セラリアはP99をホルスターにしまう。部屋の端に、段ボール箱が放置されている。彼女はその中を確かめてみた。空っぽ……しかし、セラリアの嗅覚は箱に残る微かな匂いを嗅ぎ取った。
「ふむ……ここにあったのは間違いないようね」
 尋問した男によると、携帯電話に《ドラッグ配ります》というメールが届き、ここでイエロードロップが配られたとのことだ。配ったのは、人のよいサラリーマン風の男であったらしい。
「ドラッグを無料配布ね……化粧品の試供品を配るのと違うのよ」
 サラリーマン風の男は集まった者たちに、値段設定は各自に任せるから、とにかく多くの人間に売れと言った。売り上げを何割か寄越せとは言わなかった。売り上げ金は好きにすればいいと言ったとのことだ。
 何か裏があるのではないかと勘繰った男たちだが、結局は金の魔力に負けた。サラリーマン風の男を調べようとする者は、一人もいなかった。セラリアが尋問した男も、そんな一人。
 ドラッグの売人によると、定期的にイエロードロップは無料配布されているとのことだ。
 配る場所はメールで知らされる。セラリアは尋問した男から携帯電話を奪った。が、手掛かりになるかもしれないメールは削除されていた。無料配布する男の前でお知らせメールを削除するのが、唯一のルールだと言っていた。
「《ビューティフル・ワールド》……愉快犯の集団。バーサク・ブラッドの服用者が起こす騒ぎを見て悦ぶ……そのために、無料で配布をしているか」
 セラリアは煙草をくわえ、タランチュラの姿が刻まれているオイルライターで火をつける。
「売人を捕まえて尋問しても、時間の無駄か。さて、どうするか?」
 紫煙を燻(くゆ)らせながら、セラリアは髪を掻く。
「メールが届くのを待つか」
 そして、奪った携帯電話をもてあそびながら外に出た。

☆☆☆

 真琴は父親があまり好きではなかった。彼女の父親は斗紀桜府警中央警察署の副署長である。
「昨夜、麻薬中毒者の逮捕に協力してくれたそうだな、真琴」
 朝食の席で父は言う。
「協力した憶えはないわ。警察が何もしてくれないから、私たちがやるしかないからよ」
 濃紺を基調としているセーラー服を着て、トーストを齧っている真琴の顔は不機嫌だ。
 彼女が着ているのは、新星学園の制服。襟には白いラインが二本走っている。ライン一本は中等部、二本は高等部の所属を表していた。
「そういう言い方はやめなさい。警察だって一生懸命やっているんだ」
 副署長という立場にありながら警察の怠慢を知らないらしい父親の言葉に、真琴はムッとなる。
「私たちが犯人を取り押さえてから姿を見せるような警察が、一生懸命やってる!? だったらこの世の中、一生懸命な人だらけねっ!」
 怒りの叫びを放ち、バンッとテーブルを強く叩いて真琴は椅子から立ち上がる。そして学生鞄を掴むと、いってきます、の挨拶もなしに家から出ていった。父親と顔を合わせていたくなった。
真琴の母親は、彼女が小学生の時に他界した。犯罪者に殺された。警察の対応が遅れに遅れたせいで死んだ。警察の対応があと二分、いや一分早ければ母親は死ななかっただろう。それ以来、真琴は警察を嫌い、信用していない。
 だから、アースエンジェルという自警団に入った。娘に危険なことをさせたくない父親は、何度もアースエンジェルをやめるように言ったが真琴は聞く耳を持たない。
 副署長である真琴の父親は溜息をつく。彼も警察の怠慢は知っている。何とかしたいと思っているが、何ともできない。府警本部の監査部も怠慢なのだ。
「頼りになるのは自警団と……非合法な賞金稼ぎか……情けないな」

☆☆☆

「イエロードロップ、ご存じですか?」
 その日の朝、京一はミスターXに呼ばれ、葉子の事務所で会っていた。
「ああ、知っている。最近、若者の間で流行っているらしいじゃないか。黄色い粒状だから、イエロードロップ……まんまだな。捻(ひね)りも何もない」

 

-未分類
-


コメントを残す

おすすめ作品