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ノンジャンル

Lover

   

ある、魔道がひとの生活に当然のようにある世界。
ひとりの少年、サージは、魔道学院を卒業後、寂れた寺院の尼僧のもとで修練を積んでいた。
サージの尊敬する、魔道学院の院長カーンの命では、たとえ不服でも否とはいえない。
たとえ彼女、ジーンが、生活破綻者であったとしても。

えと、本当の主人公は、ほんの少ししかでない、魔道学院院長のカーンの永遠の片思いです(失礼)。

 

 フラスコの中に注がれた、緑色の液体。
 それをアルコールランプにかけ、銀の匙に掬った、白い粉を落とす。
 すると、フラスコの中で起きた反応に、サージは、口許に満足げな笑みを刻んだ。
「いい反応……。これならいくかな」
 サージは満足げに言いながら、ビーカーに注がれた透明な、密度のある液体を眺めた。
「いかないわよ。その程度の反応じゃあ、蛙か、おたまじゃくしが、関の山。爬虫類には、なんないわよ」
 その液体を、煮立ったフラスコに注ごうとしたその時、サージの背後から放たれた声は、サージの高揚した心を、一気に暗転させた。
「……ジーン」
「気泡が小さすぎるのよ。いつになったら、理解できるのかしらね」
 振り向いた先にいた彼女は、サージの不機嫌な視線に動じることなく、気怠げに髪をかきあげた。
「あんた、やっぱり才能ないんじゃない? もう3ヵ月も、同じこと繰り返して。天才じゃなくて、鈍才なんじゃないの? 院じゃあ、首席だったらしいけど」
 黒いローブを纏ったジーンは、ビーカーを握りしめたまま立ち尽くすサージを笑い、サージの作った緑色の液体に、塩を混ぜた。
「ああ、これじゃあ、鳥類ができるか……。このフラスコじゃあ、鶉(うずら)でも納まらない」
 そして言いながら、フラスコの中身を金属の箱に移すと、サージの手にしているビーカーを取り上げ、中身を注ぎ、何やらサージには聞き取れないほどの声で、呪文を唱えた。
「金糸雀(カナリア)の出来上がり」
 そして液体は、ジーンの呪文に呼応して形を変え、オレンジ色の鳥へと姿を変えた。
「ジーン」
「何かしら? サージ」
 怒りをたたえたサージの声に、ジーンは軽く首を傾げ、サージから紡がれるだろう、ことばを待つ。
「ぼくのやることに、いちいちケチつけるの、やめてくれませんか。ぼくはあの反応で、成功だと思ったんだから、最後までやらせてください」

 

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