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ラブストーリー

仮面を捨てて♪ 1

   

突然ビル街に響いた、智香の悲鳴。
通勤用の自転車のブレーキが壊れてしまった!?
寝坊して、遅刻寸前の智香は、急いで自転車を走らせていたのが仇となり、止まらない自転車に泣き叫ぶ。
それを助けてくれたのは、同じ会社の美丈夫営業部長、猛(たけし)だった。
だが、会社での智香は『仮面嬢』という有難くない愛称の女。
その仮面嬢の崩れた表情を知ってしまった猛は…。

 

「どけてぇぇぇっ!!」
 突然ビル街の一角に響いた、女の怒鳴り声。
 何だと、歩道を歩いていた誰もがその声に振り向いた。すると、自転車に乗った女が、地面に靴を擦らせながら泣き叫んでいる。
 踏ん張りきかせている足は、どうやら止めようとしているらしい。だが、パンプスでの踏ん張りは地面に跳ね返されて、思うようにいかないようだ。
 それを見て、咄嗟に焦った男達が手を伸ばして女の腕を掴んで止めようとしたが、そのスピードがまだ緩いとは言えず、勢いに引っ張られ、直ぐに手を離していく。
「おねがいーーっ!! どけてぇぇっ!!」
 カチャカチャと無意味に握られているブレーキは、完全に役割を果たしていない。
 その時だ。
 ガツッと歩道の窪みにつま先を取られた女は、ガクンッと身体が前のめりになりハンドルから手が離れた。
 宙に浮いた身体はふわりと飛んで、女は咄嗟に目を瞑った。
 ガチャンッと派手な音を響かせてビルにぶつかった自転車は、ようやく距離を進めなくなったが、車輪がクルクルと回っていて、どれほどのスピードが出ていたかよく分かる。
「おいっ、生きてるか?」
 飛ばされた女は、痛みも何もない自分に気付いてビクリと身体を震わせ、すぐ側で聞こえた声にキツく瞑っていた目を恐る恐る開けた。すると、心配そうに覗くスーツ姿の男を見て、恐怖心から解放されたのか号泣しながら男にしがみついた。
「おいおい……、っつか……。もしかしてお前、ビルの受付嬢じゃ……」
「なんっ…!?」
 男の言葉にギョッとした顔になった女、岸田智香(きしだ ともか)。改めて男の顔を見てから、大慌てで抱きかかえられている状態を抜け出した。
「なんでっ!? よりによってっ……!!」
 完全に動揺しながら、意味のない動きを繰り返して顔を腕で隠し始めた智香。
「あっ、有難う御座いました!!」
 叫ぶようにお礼を言って90度に腰を折り曲げ頭を下げてから、大慌てでビルに衝突した自転車に駆け寄った。そして、それを起こすと慌ててまた自転車に乗ろうとした。それには男の方がギョッとなった。
「おまっ……!!」
 男は急いで智香を追いかけ腕を掴むと、耳元で怒鳴りつけた。
「ブレーキ壊れてんだろ! まだ乗るつもりかっ! この馬鹿者!!」
「ひゃっ!?」
 耳元で聞こえた大声に身体を傾けた瞬間、またしても自転車は派手な音を鳴らして倒れた。だが智香は立ったまま。男が咄嗟に引っ張って、自分へと引き寄せたおかげだ。
「……“仮面嬢”の正体がコレかよ……」
 ポツリと呟き、男が大袈裟に溜息吐いて項垂れた。
 その言葉に口の端を引き攣らせて、智香は同じように項垂れた。

 

-ラブストーリー

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