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ラブストーリー

仮面を捨てて♪ 2

   

仕事を上がる頃、降り出した雨に、智香はうんざりしたような顔になった。
今朝の壊れた自転車をどうしようかと、入り口でしばらく雨の様子を見ていた。すると、外回りから戻ってきた猛に出くわし、動揺する智香。
だが、ジッと智香を見ていた猛が突然放った言葉に、智香は驚きを隠せなかった。

 

 午後も5時を回り、社内にクラシック音楽が流れだしてから、智香達も静かに席を立った。そして溜息一つ零して、受付を離れた。
 ロッカー室に入り着替えを済ませると、弘枝が智香の肩を叩いた。
「そういや、智香遅刻したから知らないでしょ。誰かは不明だけど、上の人で異動あるらしいよ。支社長になるとかで」
「へぇ……。それはまた」
 たいして興味なさそうに返事をした智香は、ロッカー室を出てから窓の外に目を向けた。
「嘘……。雨降ってきた?」
「え? あ、本当だ~。そういや、今朝の天気予報で言ってたっけ」
 弘枝が窓に近づき空を見上げて、下を覗き込む。5階からの景色をしばらく眺めながら、弘枝は鞄から折り畳み傘を取り出した。
「本降りになる前に帰るわ」
「あ、うん」
 軽く手を上げて、サッサとエレベーターへと歩いて行った弘枝を見送り、智香は再び窓の外に目を向けた。
「……参ったなぁ。自転車もあるのに……」
 ふぅっと疲れたような息を零して、足取り重たくエレベーターへと向かう。壊れた自転車を、すぐに修理に出して直してほしいと思っていたのだ。だが、この雨の中、自転車を押していく気力もない。
 通勤には、いつもあの自転車を使っている。それこそ朝から雨だったなら、バスを使って通勤するのだが、会社からそのバス停まで少し距離があるのだ。おまけにそのバス停には、簡易屋根のようなものは付いていない。
 傘がなければ、そのまま雨の中ずぶ濡れで待たなければならないのだ。
 一階に下りて入り口に向かった智香は、既に本降りになっている雨にうんざりした顔をする。少しの間様子をみるかと入り口横に立っていると、バタバタと駆けてくる男が二人、入り口から飛び込んで来た。
「参りましたねっ、部長」
「全くだ……。やっぱり降ったな」
 息を上がらせながら、スーツについた雫を払った猛。部下に苦笑いを見せながら、長い息を吐いた。すると、横に立っていた智香に気付き、思わずジッと見る。
(なっ…何っ!? なんなのまたっ!?)
 猛の目に動揺した智香は、顔が引き攣るのを感じた。

 

-ラブストーリー

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