幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ラブストーリー

仮面を捨てて♪ 3

   

突然耳に入った、猛の異動話。
唯一、自分の表情を読み取ってくれる人が居なくなる事に、すべての気力が奪われていった。
そんな時、いきなり食事に誘われた智香は、皆でと言っていた言葉を思い出して、アッサリと了承したのだが、実は二人きりという意味で誘われていたことに気付いて…。

 

 仕事に入って一時間が過ぎた頃、化粧室に行っていた弘枝が、些か慌て気味に受付へと戻ってきた。
「ちょっと、今耳に入ったんだけどさ。あの異動の話あったでしょ? あれ、高見部長の話らしいよ」
「え……?」
「あぁ~~~~~、唯一の目の保養がぁぁ……」
 わざとらしく頭を抱えて落ち込む弘枝を他所に、智香は一点を見詰めながら今朝の事を思い出していた。
(もしかして、もうココから居なくなるから……。最後だからって、アタシにも声かけてくれたんだろうか……)
 そう思うと、すっかり気持ちは沈んでしまった。
 皆でと訂正したのは、もしかして、その事の報告も兼ねてなのではないかと、溜息零した。
「にしても、高見部長ならアリだよね。あの人は、頭もキレるし統率力もあるし」
 弘枝は、この異動の話に納得するように頷く。そんな弘枝をチラリと見てから、智香は「そうだね」と一応の返事をした。
 その時、廊下を誰かが歩く音が聞こえて、二人はさりげなく背を伸ばす。そして、澄まして通る人物を見た。
 大きな鞄を持って歩いてきたのは、猛と武藤だ。その二人に軽く頭を下げた智香と弘枝。すると、歩く速度を緩めた猛は、チラリと智香を見てからそのままビルを出て行った。
(あの姿が見れなくなるのか……。ちょっと辛いかも……)
 すっかり落ち込んでしまった智香。気が付けば項垂れていた。
「智香、具合悪い? 眠い?」
「あ、いや、……ちょっと寝不足で、睡魔が」
 僅かに口角を上げてから頭を戻した智香は、小さな溜息を零した。

 昨日置き去りにした自転車を押しながら、自宅に戻った智香は、眉を下げて着替えもせず床にへたりこんだ。
 ようやく自分の表情を見分けてくれる人に出会えたというのに、それが憧れの猛だったというのに…と、激しい落ち込みが気力を奪っていく。
 また、『仮面嬢』と呼ばれるしかないのだなと、小さなテーブルに力無く伏した。

 

-ラブストーリー

仮面を捨てて♪<全3話> 第1話第2話第3話
アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第34話「それでも――――」

   2017/11/20

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】15

   2017/11/20

ロボット育児日記39

   2017/11/17

忠実な部下たち

   2017/11/17

モモヨ文具店 開店中<36> ~帰り行く者~

   2017/11/16