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ラブストーリー

LOTUS 〜Start Your Engine〜 <中>

   

「そうだよね、コレ夢だよね。アタシって実はさ、結構、夢を見るタイプなんだよね。それもかなり突飛な夢」
「んま、どんな?」

LOTUS』 ―真理×日向子―
≪光輝*高等部2年生*4月≫

Illustration:Dite

 

 アラやだ、アタシとしたことが人間型を見られちゃったわ。
 こんなときは、慌てず騒がず、冷静に♪

 いったんケージに戻り、「夜食」を済ませたベルンが再びコタツ兼用テーブルに戻ると、コンビニ弁当を片付けた真理がマグカップにティーバッグを入れたまま、熱い紅茶をすすっていた。真理はどちらかと言うとコーヒー党なのだが、今日は出先で何本もコーヒーを御馳走になったため、紅茶に宗旨替えをしたらしい。
『あっきれた。アンタ、それでホントに喫茶店でバイトなんかしてたわけ? ヒナコちゃんがアンタの紅茶、やたらと褒めてたから、ちょっと感心してたのに』
 愛しの日向子が来れば、たとえそれが安価なティーバッグだったとしても、先月までのバイト先で習い覚えた「美味しいいれかた」を実践したことだろう。だが、誰の目もない自分用だと思うと、途端に面倒になるらしい。家事ができないわけではないのだが、自分のためとなると、本当に最低限しかやらないのである。
 許されるなら、人間の姿になって、もう少し真理の世話を焼いてやりたい――もといた世界の想い人に感化されたのか、こう見えてなかなかに情愛深いベルンは、真理のあまりに適当な生活ぶりを目にするたびに、そんなことを思って嘆息するのだった。
「あ、コレいいな」
『どれ?』
 さっきから真理が熱心に眺めているのは、会社の上司から手渡された、「ショウコ・ミーツ・ブルーバード」の企画書&リリース予定の商品一覧だった。
 子供服の中堅ブランドとして知られる「BLUE BIRD」が、新進気鋭の女性ドライバー・高鳥翔子をイメージモデルに迎えてデザインしたアイテムは、スポーティーなTシャツやポロシャツ、ジップアップ式のパーカなどだった。ショートパンツなどのボトムスや、タンクトップをメインにしたインナー、果てはヘアアクセサリーやバッグ類まである。
 メインカラーはSTレーシングのチームカラーでもあるブルーがメインで、どのアイテムも青系で統一されている。ファッション誌やスポーツ誌はもとより、WEB広告などにも力を入れて行くらしく、かなり気合いの入った展開になるようだった。
「こういうのだったらアタシもイケるし、ヒナにも似合いそう」
『あ、わかった、コレね。このポロシャツのシリーズでしょ』
「うーん、アタシもひとつ買っちゃおうかな」
 近年はキッズ向けに留まらず、ヤングティーンにも注力していることもあり、今回の「ショウコ・ミーツ・ブルーバード」は、10代だけでなく20代もターゲットに入っている。モータースポーツに好意的な若い女性も取り込み、やがては母親になるであろう彼女たちに、子供服ブランド「BLUE BIRD」の名を売り込もうという目論みなのだ。ターゲットどまんなかの真理や日向子にも、良く似合って当然なのだった。
『ヒナコちゃんにはちょっとシンプルすぎるような気もするけど、この羽刺繍がカワイイじゃない。ヒナコちゃんなら、絶対こっちのポロワンピースねッ』
「アタシだったら、ネイビーかマリンブルーがいいな。去年買ったスキニーカーゴと合わせれば、撮影に着て行けるかも。ヒナは……こっちのシャーベットブルーのワンピース」
 撮影の興奮冷めやらぬのか、真理はベルンをケージに戻すことも忘れて、先週末に日向子が差し入れてくれたクッキーをかじりつつ、買い込んで来た雑誌と企画資料に見入っていた。普段は「夜更かしなんて美容の大敵!」と主張しているベルンも、今夜は真理に付き合うと決めたのだろう、真理の頭上にとまって再び誌面に目をやった。

 

-ラブストーリー

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