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GunDaddy&GunDaughter~ガンダディ&ガンドーター~第11話

   

師匠であり姉であるセラリアから一緒に《ビューティフル・ワールド》のメンバーを捜すように頼まれた京一。《ビューティフル・ワールド》に懸かっている賞金は京一と香音に渡すとのことなので、京一はセラリアの頼みを聞く。
断ると、後が怖いから……。
そして香音が通っている学園の高等部では、ある騒ぎが起きる。
ドラッグ中毒になった生徒たちが暴れているのだ。
真琴は暴れている生徒たちを止めるべく、武器を持って戦いに挑む……。

 

「バーサーク・ブラッド……完成していたんだな。まあ、五年も経つんだ。試作品が、量産品になるには充分な時間だな」
「そうね、そのとおりだわ。ところで京一……」
 ビールを飲み干したセラリアは、香音(かのん)に視線を向ける。京一は彼女が何を言いたいのか分かった。
「ああ、香音は俺が《死神の秘文》にいたことは知っている。俺が元・殺し屋だってことも話してある」
「なら、話してもいいわね。イエロードロップは《ビューティフル・ワールド》が勝手に呼んでいる名前よ。正式名称はバーサーク・ブラッド。ある組織に依頼されて、うちが開発したのよ」
 セラリアはイエロードロップことバーサーク・ブラッドについて説明する。
 あるところから依頼されて、《死神の秘文(デス・スペル)》が開発を進めていた薬物。
 依頼主が納得するものを完成させるために、四年という時間を費やしてしまった。だが、時間を費やした分、依頼主が納得するものを造り上げることができた。
 バーサーク・ブラッドの主な効果は、痛覚の麻痺に精神高揚、肉体能力の一時的な強化、そして暗示に掛かりやすくなる、などだ。
「バーサーク・ブラッドが完成し、サンプルと共に依頼主に製造データを渡す……で、うちはバーサーク・ブラッドの製造データは破棄する……っていうのがルール」
 バーサーク・ブラッドは《死神の秘文》が使うものではなく、依頼主が所属している組織が使うものだ。
 だから《死神の秘文》側は製造データを破棄することになっていた。
「でもね、バカが一人いたのよ。バーサーク・ブラッドは本来、戦士の精神を高揚させ、痛覚や恐怖心を麻痺させるための薬なの」
 セラリアの話を聞いている香音は、気になることがあるが気にしないでおこうという表情を浮かべている。
 バーサーク・ブラッドの開発を依頼した組織のことが気になっているのだろう。
 だが、この世の中には気にしてはならないことがある……さっきセラリアの年齢を気にした時、そのことを彼女は学習したようだ。
 それでいい、と京一は思った。この世には気にしてはいけないこと、知ってはいけないことというのがあるのだ。
 不用意に、それに足を踏み入れることはない。迂闊に足を踏み入れたら、危険に身を晒(さら)すことになりかねないのだから。
「効果を聞けば分かるかもしれないけど、ドラッグとしても使えるわ。濃度を調整する必要があるけど、それは簡単なこと。で、そのバカはバーサーク・ブラッドで一儲けしようと考えた。《死神の秘文》で働いていては得られない金を得ようと考えたのよ」
 消去すべきデータを消去せず、セラリアいわくのバカ……開発者の一人は《死神の秘文》を脱走したらしい。
 そして追っ手の目を欺(あさむ)くため、あちこちを経由して日本(ひのもと)に渡ったとのことだ。
「まったく、《死神の秘文》の質もここ数年落ちてきているわ。凄腕の殺し屋に欺かれるのは、まあいいとしましょう。ただの科学者に撒(ま)かれるちゃうんだから」
 セラリアは呆れたように肩をすくめると、通り掛かったウェイトレスにビールのおかわりを注文する。
「香音ちゃんは未成年だからダメだけど、京一は飲まないの?」
「俺はいい。外じゃ飲まないことにしている」
 追加の大ジョッキのビールを一気に半分飲むと、セラリアは話の続きをする。
「ま、そのバカは死んだけどね。《ビューティフル・ワールド》に殺されたのよ」
 バカは死んだが、製造データは残っている。セラリアはその製造データを消去しに日本に来たのだと言う。
「さて、京一。香音ちゃんと一緒に賞金稼ぎをしているんですって? 親子で私に手を貸してくれないかしら?」
「何をさせる気だ? 姉の手伝いをするのが弟としての役目なんだろうけど、手を貸すか否かは内容次第だ。今の俺は殺し屋じゃないんだからな」
「安心なさい、手伝ってほしいのは人殺しではなく人捜しよ。あなたたちにとってプラスになるわ、マイナスにはならない」
 残りのビールを飲み干したセラリアは、さらに大ジョッキのビールを二杯と特盛りのアイスクリームを注文する。
 皿に山盛りになったアイスクリームを、彼女は平然とした顔でほんの一分で平らげてしまう。それを見た香音は感心半分呆れ半分という表情を浮かべている。
 そんなに早くアイスクリームを食べて、よく頭痛がしないものだとでも思っているのだろう。
「連中には高額の賞金が懸かっているんでしょう? 連中を捜し、見つけ、捕まえる……私は賞金稼ぎじゃないけど、あなたたちは賞金稼ぎ。あ、特盛りアイスクリーム二つ追加ね」
 アイスクリームを腹に納めたセラリアは二杯の大ジョッキ・ビールを瞬(またた)く間に飲み干す。
 大ジョッキで四杯もビールを飲んだ彼女だが、頬を少し赤く染めただけで酔っ払ったような様子はない。瞳の光はしっかりしており、呂律(ろれつ)もちゃんと回っている。
「賞金は全部そっちにあげるわよ。私はバーサーク・ブラッドの製造データを消去できればいいわけだし。それに、お金は《死神の秘文》から入るもの。あ、ビール、大ジョッキでもう一杯ちょうだい」
「ま、確かにマイナスにはならないな……ってか、セラリア。確かに奢るって言ったけど、少しは遠慮しろよ」
「すごすぎ……何か、見ているだけでボク、気持ち悪くなってきたよパパ」
 トレーニングや賞金稼ぎの活動でカロリー消費が激しい京一や香音もそれなりに食べる方だが、セラリアの食事量は普通ではない。
 香音の言う通り、見ているだけで腹が膨れ、気分が悪くなってしまいそうである。
「これでも遠慮している方よ」
 と言うセラリアに、京一は「どこがだ」と不満の呟きを漏らす。
「香音ちゃんもアイスクリーム食べない? ここのアイスクリーム、美味しいわよ」
「いえ、ボクは結構ですセラリアさん」
「あら、アイスクリームは嫌い?」
 そうではなく、見ているだけで胸焼けがして食べる気が起きないのだろう。京一も同じことを言われたら、胸焼けが原因で断りを入れるところだ。
「で、京一、手を貸してくれるのかしら?」
 セラリアの目的が、製造データの消去だけではないことを京一には分かっている。
《ビューティフル・ワールド》のメンバーを生け捕りにする気が無いことも充分に分かっている。
 データの消去だけなら、超一流の殺し屋レディ・タランチュラが派遣されるわけがないのだ。

 

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