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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

プラチナ・フィンガー〜官能小説家を見つけたら〜<5>

   

治療室は外部から厳重に隔離されていた。その密室の中で患者が刺殺された。患者の胸は血で真っ赤になっていた。

 

 午前中かかって兼六園を見物した森川紗智子は、近江町市場の寿司屋へ入った。
 金沢の観光ガイドブックには必ず書いてある定番の昼食スポットである。
 昼食の後、場所を変えてコーヒーを飲みながら、金沢の地図を見る。
 長町武家屋敷の場所を確認したのだ。
 そこを歩きながら、プロットを練り直そうと思ったのである。
 長町の武家屋敷、これも有名な観光スポットである。
 きれいに整備された塀に両側を囲まれた細い道が続く。
 道は適当に曲がっており、江戸時代へ入ってしまったような感覚になる。
 道の向こうから侍が歩いてきても不思議ではない……。
 それでも、道の途中には小さな手作り工房の店があったりして、現実に引き戻される。
 幸いなことに修学旅行のグループはいなかった。
 ときどき女性二人組の旅行者とすれ違うだけで、あたりは静かである。
 考え事をするには格好のシチュエーションであろう。
 歩きながら考える、これは森川紗智子の癖であった。
 森川紗智子が官能小説でベストセラーを続けられたのは、幸運からではない。
 それなりの努力をしていたのだ。
 官能小説の目的ははっきりしている。
 それだけに、すぐにマンネリに陥ってしまう。
 毎回、飽きられないように工夫をしなければならないのだ。
 その工夫を、歩きながら考えていたのである。
 官能小説でもアイデアが必要。
 それが今度はアイデア勝負の推理小説である。
 しっかりと考えなければならない……。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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