幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

記憶と知恵のカラマリ(2)

   

「記憶」の本を手に取った香田は、その恐るべき効果に驚愕する。また、イファカルから貰った資料の有用性は素晴らしいものがあり、資料を論文にまとめた香田は、非公式の場ながらも教授から大絶賛を受けた。

「これなら、行ける」と確信した香田は、論文の礼もかねて、再びミステリアスな館に足を運ぶのだった……

 

「ふふっ、どうしたのかな? お目当てじゃろうに、表紙だけ見ていても仕方がなかろう」
「はっ、はいっ!」
 イファカルのいたずらっぽい笑い声に、香田は背中をびくりとさせた。
 そして、弾かれたように、本を開け、中身に目を通す。
 その本は、手触りからして、普通の紙で印刷された書籍とは異なっていた。やけに厚くて、しっとりとした質感がある。
 羊皮紙、というのだろうか、かつて紙の印刷が一般化される前に作られた本は、こんな感じなのかも知れない。
 書いてある活字も、決して消えることはなさそうだが、活版ではなく、筆で直接書かれたもののように見える。
(こ、これは……)
 明らかに、書かれている内容も一般的なものとは違っていた。
 香田の知識をもってしても、正確には読み切れないようなものだった。
 しかし、香田は、近くにいるはずのイファカルが、何を話しかけてきているのか、どんな様子でいるのか、全く分からないほどに、集中していた。
 本が有する莫大な、「内容」そのもののエネルギーに、香田は心を奪われていた。
 小手先のテクニックだけではなく、何をどうすれば、脳をうまく回転させ、記憶力の「数値」を上げられるのかが、言葉ではなく感覚で理解することができる。
 一ページ、いや、一項目、一行読み進めるごとに、脳細胞が活性化し、思考回路の通りそのものが良くなっているのを感じ取ることができた。
 しかも、かつてないほどの集中力を使って読み進めているだろうに、全く疲労感を覚えることもない。一体、何が起こっているのか想像もつかないが、普段とはあまりにも違った状況に置かれていることは間違いなかった。
「ふう、はあ、はあっ……」
 どれぐらいの時間が経過しただろうか、香田は、分厚い奇妙な本を、最後まで読破していた。
 息が切れ、額には汗が滲んでいるのが分かる。
 しかし、それは疲労感からではなく、自分の中に根付いた強大な「何か」の熱によって、全身が火照っているからのように、香田は感じていた。
 実際、疲れはない。勢いに乗って、専門書の五冊でも読めてしまえそうな気さえする。

 

-SF・ファンタジー・ホラー

記憶と知恵のカラマリ<全7話> 第1話第2話第3話第4話第5話第6話第7話

コメントを残す

おすすめ作品