幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ラブストーリー

また一年頑張るわ

   

一年に一度しか会う事を許されない夫婦の物語。

※関西弁が苦手な方には耐えられないかも知れない話です。苦手な方はご注意ください。

 

「なあなあ、一年に一回しか会えへんって、ケチくさいと思わへんか?」

「しゃあないやん、そういう決まりなんやし」

「冷たいなあ、お前は寂しないんか」

「そら寂しいよ。ウチかて毎日会いたいわ」

「やろ? やったらもう、毎日会ってもええやんか」

「そやかて、一年に一回って決められてるやん」

「決まりなんて破るためにあるんや。これも破ったったらええ。第一夫婦やのに、年一でしか会えへんってのもけったいな話やないか。単身赴任しとるサラリーマンでも、もっと嫁に会っとるで」

「そうやけども……そんなことしたら、お父ちゃんがごっつ怒りよるから、ウチ、怖いわ」

「天帝はん、怒ったらおっかないもんなあ……って、よう考えたら、一年に一回しか会えへんようになったんは、お前のせいやないか」

「そうやったっけ?」

「そや。お前がワシとの結婚に浮かれて、織物を織らへんようになったから、お前んとこの父ちゃんがごっつ怒って年一しか会えへんように決めたんや」

「ちゃうちゃう、私だけのせいやない。あんたかて牛飼いの仕事ほっぽりだしとったやんか。川辺でいちゃいちゃしとったとき、後ろで牛が腹減ったってモーモー鳴いとったの覚えてるもん」

「おお、よう考えたらそうやったな。そんで、ようお前の父ちゃんがやってきて、『そろそろ働こうや』って言われてたもんな」

「うん、その度に『明日から頑張る』『明日から本気出す』『来年こそはスパークする』って適当に流しとったよね」

「そら怒るか、天帝はんも」

「でも結婚した直後って、一番盛り上がるやんか。時間の限りいちゃいちゃしたいやん?」

「うんうん。めっちゃ楽しいもんな。川辺であんなことやこんなこと……色々したなあ……」

「言わんといて、恥ずかしいやんか」

「今更純情ぶんなや。お前もごっつノリノリやったくせに」

「嫌やわあ、アンタ、何年経ってもデリカシーないわあ」

「お前にデリカシー云々言われたないわ。ようスッケスケの織物を身体に巻き付けて、『セクシーやろ?』とか言いながらポーズをとっとったやないか」

「そんなん、若気の至りや。そう言うたらアンタかて、『俺のは牛より大きいし、ミルクの量も負けへん』って自慢しとったやないの」

「……うっさい、俺も若気の至りや」

「そやね……若い頃はアホをするのが楽しかったよね」

「なにしんみりしとんねん。湿っぽうなったら雨が降って、カササギらが心配して飛んできよるやんか。そうなったら地上におる人間に俺らのいちゃいちゃを見せつけられへんようになるやろ」

「なに? アンタ、他人様にウチらのいちゃいちゃを見せつけたいの?」

「当たり前や。一年に一度やぞ? がっつり見せつけんでどないすんねん」

「けったいな事言うわあこの人。露出狂かいな」

「別に露出しとんやないわ。カップルっつうのは、見せつけてなんぼやねん。その証拠に見てみい、ほら、あそこ」

「どこ?」

「ほら、あそこや。他の建物よりずば抜けて高いあのビルの上」

「ああ、なんやら展望台になってるあのビルかいな。あそこがどないしたの?」

 

-ラブストーリー

アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第34話「それでも――――」

   2017/11/20

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】15

   2017/11/20

ロボット育児日記39

   2017/11/17

忠実な部下たち

   2017/11/17

モモヨ文具店 開店中<36> ~帰り行く者~

   2017/11/16