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SF・ファンタジー・ホラー

妖食フルコース デジュネ <アペリティフ>

   

「ぼうやが勝ったら、あのお姉さんにかけられた、悪い魔法を解いてあげる」
「ぼくが負けたら?」
「こわーい魔女が、ぼうやにも、悪い魔法をかけてしまうわ」

妖食フルコース デジュネ
 ~第1章:アペリティフ~

Illustration:まめゆか

 

◆アペリティフ◆
《シードル》
 ~シードルまたはリンゴ酢ソーダ~

 いい料理、それは思い出。(ジョルジュ・シムノン)

 土曜日の朝。
 ぼくは、学校に行くときよりも、1時間も早く起きた。
 そうしてすぐにごはんを食べて、自分でライオンの絵をかいた、黄色のけいたい電話を持って、オレンジ色に黒の線が入ったスニーカーをはいて、自転車にのって出かけた。
 行き先は、いつもと同じ。
 自転車で1時間もかかる、すごく遠くの、大きなスーパー。
 ふつうのスーパーだけじゃなくて、花屋さんとか本屋さんとか、パン屋さんなんかもある。ぼくは、あの日からずっと、スーパーのベンチにすわって、近くの道路を見ていた。
 今日こそ、お姉さんが来ますように。
 今日こそ、お姉さんに会えますようにって、おいのりしながら。
「ああ、見つけた。ぼうや、あなたね」
 1時間くらいして、スーパーが開いて、少したったころ。
 ぼくの前に、白い服を着た、知らないおばさんがやってきた。
 おばさんは、ぼくの前にしゃがみこむと、にっこり笑った。
「ふふ、なんてかわいい子。水鏡に映った面影より、ずっとかわいくて賢そうだわ」
「おばさん……だれ?」
 本当に知らない、見たことのないおばさんだった。
 でも、お母さんが見てるテレビドラマに出てくるひとみたいな、きれいなおばさんだった。
「わたし? わたしはね、ぼうやに、いいことを教えに来たの」
「いいことって?」
「耳を貸して」
 白い服を着たおばさんが、ぼくの耳に口を近づける。
 そうして、ぼくの探しているお姉さんが、悪いまじょにつかまっていることを教えてくれた。
「まじょ?!」
「シッ」
 おばさんは、ぼくの口に人さし指を近づけると、また、にっこり笑った。
「ぼうや、あのお姉さんを助けたい?」
 ぼくは、すぐにうなずいた。
 首がいたくなるくらい、強くうなずいた。
「そう。そうよね。それなら、わたしとゲームをしましょう」
「ゲーム?」
「とおっても楽しいわよ、このゲーム」
 おばさんのうしろに、いつのまにか、女の子が立っていた。
 人形みたいな、ふわふわのかみの毛で、人形みたいな、ひらひらの水色の服を着ている。その女の子も、にっこり笑っていた。
「どんなゲーム?」
 おばさんも、女の子も、にこにこ笑っているのに、どうしてか、ちょっとこわい。でも、ぼくは、勇気を出して聞いてみた。
「むずかしい?」
「簡単よ。これからわたしたちと一緒に、素敵なレストランへ行きましょう。そこで、お食事をするだけ。ルールは、最後までお行儀良く、残さずに食べること」
「それだけ?」

 

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