幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

妖食フルコース デジュネ <アントレ>

   

「わあ、かわいい! 本当に、わたしがもらってもいいの?」
「うん。ぼく、男だから、ぬいぐるみなんかいらないし」
「嬉しいな、ずっと大事にするね。ありがとう、レオくん」

妖食フルコース デジュネ
 ~第3章:アントレ~

Illustration:まめゆか

 

◆アントレ◆
《テリーヌ・ド・レギューム》
 ~季節の野菜とウィユのテリーヌ~

 おいしい料理を作るのは、
 恋をするのに似ている。 (ベルジャーヌ)

 2日間の「子どもパティシエ教室」は、はじめに思っていたより、ずっと楽しかった。お姉さんが言っていたとおり、かんたんそうに見えても、きれいにおいしく作るのは、ちょっとむずかしかった。
 ロールケーキのスポンジに生クリームをぬるときと、くだものを入れてまくときはドキドキしたし、シュークリームの皮をオーブンに入れたときは、ちゃんとふくらむかなって、心配だった。
 楽しかったのは、生クリームをあわ立てたのと、白鳥と花かごのシュークリームを作ったこと。でも、一番楽しかったのは……お姉さんと、いろいろおしゃべりできたことだった。
「そうなの。レオくんは将来、ハイパーレスキュー隊員になるの」
「うん。ようちえんのときに、そう決めたんだ」
 おかしを作るのは、午前と午後にひとつずつ。
 お昼ごはんは、うちからおべんとうを持って行くんじゃなくて、2日間とも、お姉さんたちが作ってくれた。
 お姉さんたちの学校は、ケーキ作りだけじゃなくて、夕ごはんに食べるようなふつうの料理と、パンを作る勉強もある。ぼくたちがプリンやパイを作っているあいだ、お姉さんたちはときどき交代でとなりの教室に行って、パンを焼いたり、サラダを作ったりしていた。それが、ぼくたちのお昼ごはんになった。
 昨日は、じゃがいもの冷たいポタージュスープと、給食にも良く出てくるヨーグルトのかかったフルーツサラダと、ハンバーガー。今日は、いろんな具の入ったのサンドイッチと、ちょっとすっぱいりんごのソーダと、いろんな野菜がいっぱい入った……なんかヘンなのだった。
「お姉さんは、しょうらい、ケーキ屋さんになるの?」
「うん、なれたらいいな」
「なれなかったら?」
「そうね、どうしよう……ケーキ屋さんになれなかったら、ぬいぐるみ屋さんになろうかな」
 大人みたいなお姉さんなのに、クラスの女子みたいなことを言うから、ぼくは「なんでぬいぐるみ屋さんなの?」って聞いてみた。お姉さんは、青りんごのうす切りがたくさん入った、ちょっとすっぱいりんごのソーダを飲みながら、「ケーキの次に、ぬいぐるみが好きだから」って言った。
「わたし、ひとりっ子だから、家ではぬいぐるみがお友だちなの。でも、一番なりたいのはやっぱりケーキ屋さんだから、もしケーキ屋さんになれたら、レオくんの好きなケーキを作って、プレゼントするね」
「じゃあね、ぼくはね」
 お姉さんが、ぼくのお皿に、小さく切った野菜がいっぱい入った、なんかヘンなおかずを取ってくれる。食べるかどうかを考えるのはちょっと置いておいて、ぼくは、ドキドキしながら言った。
「ハイパーレスキューになって、お姉さんがもしピンチになったら、レスキューしに行ってあげる」
「本当? ありがとう」
 そう言って、お姉さんがにっこり笑ったから。
 ぼくは、しょうらい、ぜったいハイパーレスキューになるぞって、かたく心にちかった。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


コメントを残す

おすすめ作品