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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

プラチナ・フィンガー〜官能小説家を見つけたら〜<6>

   

被害者は、金属どころか紙一枚持ち込めない密室で刺殺されていた。凶器は何か? 凶器はどこへ行ったのか?

 

 大光寺克己は、マッサージをしながら話を続けた。
「病人は超大物なんですね」
「ええ。もし死んだら、日本どころか世界中に影響が出てくるような大物、という設定なの」
「なんとか生かしたいので究極の治療室へ搬入した。一方の敵方にしてみれば、このまま死んでくれれば、こんなラッキーなことはない、と思っている……、ですね」
「そうなの」
「それならば、被害者は医師にしたらどうです。その超大物を生かすためには、究極の治療室に入れて、天才的な腕を持った医師Aが治すしかない」
「だから、医師Aが殺されてしまえば、超大物は死ぬしかない、ということね」
「はい。しかも、弱っている超大物を直接殺すのではなくて、医師Aを殺すことで、敵方の残酷さ、というか力の強さをアピールすることにもなります」
「われわれの力は厳重に隔離された建物の中にも及ぶのだぞ、という訳ね」
「そうです。こうすれば刺殺ということの必然性も出てきますよ」
 森川紗智子は納得した。
 自分で組み立てたプロットの弱点がようやく分かり、しかもその弱点が克服出来たのだ。
「その通りだわ。大光寺さん、ありがとう。このアイデア料はおいくら? 印税でお支払いするわ」
「アイデア料なんて大げさな……。参考にして頂ければ、それで結構ですよ」
「そうはいかない。推理小説はアイデアが勝負なんだから、きちんとけじめはつけるわよ」
「私は鍼灸師ですから、鍼やマッサージの料金は頂きますが、アイデア料はいりません。そんなことよりも、消えた凶器のことが気になるのですが……」
「ああ、そのことね」
 もちろん、森川紗智子がこの推理小説を書こうとした直接のきっかけは、消えた凶器のトリックを思いついたからであった。
 このトリックには自信があったのだ。
 これまでは……。
 大光寺克己のアイデアを聞いているうちに、その自信も少し揺らいきたのであった。
「先ず、犯人のことを話すわね」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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