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SF・ファンタジー・ホラー

記憶と知恵のカラマリ(6)

   

香田は、イファカルたちから貰った「本」の効果を実験するために行動を開始した。途中で、滝口に遭遇するというトラブルはあったものの、実験の結果は香田を満足させるものだった。

だが、意気揚々と館に戻ろうとした香田は、「異変」を目にすることになった。

 

 香田は、校外のコンビニに向かった。違法なことをするわけでもなし、別に校内の設備を使っても良かったが、ばれたくない心理が働いたので、校外まで足を伸ばすことにしたのだ。
 露見する前に事を進める必要があるとは言え、時間的猶予は少なくない。
「いらっしゃいませ」
 コンビニの店員は、いつにも増してやる気がなかった。
 教育が行き届いていないのか、深夜でもないのに、ほとんど寝ているような状態で、挨拶だけを返してくる。
 これで良くミスをしないなと感心してしまうほどだが、今の香田にとっては都合がいい。彼なら、たとえ客が怪しげな挙動をしていても、万が一にも警察に通報するようなことはないはずだ。
 香田は注意深く左右をきょろきょろと見渡してから、「本」を開いて、コピー機の底面に伏せ、コインを入れ、ボタンを押した。
 人工的な光が閃いて、情報が印刷されたコピー用紙が機械から出てくる。香田は十回コピー機を「光らせ」、本を取り替え、また印刷を進めた。五分ほどで、五種類の「本」の内容が記されたコピー用紙が十枚ずつ、つまり、合計五十枚の印刷をすることができた。 香田は分厚い用紙の束を片手に取り、くるりと丸めて手提げカバンの中に放り込んでから、何食わぬ顔で買い物に移った。
 買う物はノートに鉛筆、ボールペン。
「急いで教材をコピーしに来た大学の教師か助手」を演出するためである。
 実際、大学の関係者なので、あながち間違いではないのだが、香田の身分や容姿からして、「自然」な買い物をしておけば、万が一事が明るみに出た際も、怪しまれずに済むというものだ。

 

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