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ラブストーリー

Home made 恋レシピ 6

   

フミの体調が思わしくない。
その事が、杏樹の気持ちを沈ませた。
自分の勝手が、フミの体調を悪くしているのではないかと責める。
早めにこの家を出よう、そう思っていた矢先に、フミの様子がおかしくなった。
気が動転して、何をどうすればいいか分からなくなっていたその時、一度家に戻っていた光輝が再び戻ってきた…。

 

 自分の都合で人を巻き込んでいることに、後悔する気持ちが湧き上がる。だんだん情けない顔になり、目が熱くなりかけたのを、唇結んでどうにか堪えた。すると、片目だけ開けて、ムッとした顔を向けたフミ。
「死人に向けるような顔しおって。まだピンピンしてるわ。さっさとメシ運んで、粥冷ましな」
 そう言って布団から手を出し、杏樹の手をバチンッと叩いた。
「いったぁっ……」
 いきなり叩かれて同じくムッとした顔をすると、光輝がお盆に丼を持って現れた。
「もう冷ましてきたって。ほら、起きれるか?」
 布団の横にお盆を置いて、フミが起き上がるのを手伝ってやると、腿の上にお盆を乗せてやった。
 丼の中には先程の粥と、刻んだきんぴらと佃煮が乗せられている。その横に、小鉢に入った小さな豆腐が乗せられていた。
「混ぜて食えな。でもって今朝、上村の豆腐もらったから、持ってきた。温めてあるから、ちゃんと食べること」
「上村の豆腐かい。そういやしばらくご馳走になってなかったね」
 フミは蓮華を持って、生姜が乗った豆腐をすくい、かけてあっただし汁と一緒に口の中に入れた。
「んー……、良い味だねぇ」
 豆腐を食べて嬉しそうに微笑んだフミ。その姿を見て、杏樹は何というわけでもなく、疎外感を味わう。まるで光輝が身内のようだ。自分が他人のような気がして、杏樹は静かにそこを離れテーブルに戻った。
 自分の分の食事を前に、なんとなく食欲もなくなり、箸を持とうとしていた手を戻した。そして、冷蔵庫に行き麦茶を取り出すと、コップに入れて一気に飲み干した。
「おーい、アンコ。フミちゃんに温かいお茶淹れてくれ」
「あ、はいっ」
 いきなり声を掛けられて驚きながらも、ヤカンに水を入れ火にかけた。
 急須を用意して湯飲み茶碗を取り出し、茶葉を入れてから小さく溜息つく。
 早めにここを出る予定を立てた方がいいかもしれない、そう思った。フミの日常を乱してしまっている事を、杏樹は強く感じて反省した。
 だが、自宅に戻ることは選択肢として外していた。
 この近辺で部屋を探して、この地域の空気を吸っていたかった。息苦しい空気の中にまた戻る事は嫌だった。決して、自宅が嫌なわけではない。ただ、杏樹の求めている人とのふれあいというものが、この土地では感じられる。
(そう……。ここの方が、アタシには合ってるんだ。だから、この近くで部屋を借りて……、これ以上、ばあちゃんの生活を乱さないためにも……)
 ヤカンが音をたて、火を消した杏樹は、少しばかり冷ましてから急須に注いだ。そして湯飲み茶碗に注いで、フミの布団に運んだ。

 

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