幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

記憶と知恵のカラマリ(7・完)

   2011年8月5日  

完璧な「実験」を行ったと思っていた香田だったが、イファカルの言葉によって、その過程でいくつものミスを連発し、露見に至ったことを知る。怒るよりも諭すようにミスを指摘するイファカルの姿は、香田の行動の杜撰さを証明しているようでもあった。

そして、記者たちが帰ったところで、香田はイファカルに、ある事実を突き付けられるのだった……

 

「何故、何故だ。一体、何が……」
 香田は目の前の光景に、同じことを繰り返すしかできなくなっていた。
 あれほど強化したはずなのに、どうすればいいのか、思考回路がまったく働いてくれない。
「情報」を処理できていないからだと、僅かに残った理性が告げている。
 どうして、学生たちが「館」の中に入り込んでいるのか、そもそも、何で記者たちが自分に集まっているのか、全く分からないから、頭脳を動かしようがないのだ。
 そんな香田に対し、イファカルは、まるでいたずらをしたやんちゃ坊主を見るような眼差しと苦笑いを向けつつ、口を開いた。
「まったく、お主は慌て者じゃな。善悪は置くにしても、最も大事な材料を忘れては話にもならんじゃろうが」
 イファカルが手渡してきた、一冊の「記憶」本を目の当たりにして、香田は叫び声を上げかけた。
 抑え込もうとして、軽く舌を噛んでしまい、口の中に鋭い痛みと鉄の味が広がる。
 九割方上手く行っていた戦略が、大失敗だったことを思い知らされた瞬間だった。
 書類や本をコピー機で印刷したなら、絶対に原本を忘れないようにしなければいけないというのは、鉄則中の鉄則だ。
 優秀極まり、イファカルたちすら利用しようとしていた自分が、まさかこんな単純なミスをしているとは、ショックを受けるというより、信じられないという感情の方が近い。
 もっともイファカルは、打ちひしがれている香田に向かい、さらに、追い打ちの言葉をかけた。
「しかし、忘れたのがあのコンビニで良かった。バイトをしていたのが、ここの学生だったから、香田の顔を知っていてくれて、すぐに連絡が行った。まあ、資料の散逸など、珍しいことでもないがな」
(く、くく、また、失念していた、だって……!?)

 

-SF・ファンタジー・ホラー
-

記憶と知恵のカラマリ<全7話> 第1話第2話第3話第4話第5話第6話第7話

コメントを残す

おすすめ作品

アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第34話「それでも――――」

   2017/11/20

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】15

   2017/11/20

ロボット育児日記39

   2017/11/17

忠実な部下たち

   2017/11/17

モモヨ文具店 開店中<36> ~帰り行く者~

   2017/11/16